昔勇者で今は骨2 双竜の転生者

プロローグ 魔軍令は苦労する

プロローグ 魔軍令は苦労する


「では次の議題だが……………………りゆうぐんはどうする」


 おう軍軍令最高責任者であり、ぐんとうすい官であるフギムニはたっぷりためらってからその言葉を口にした。人間の社会で言えば上級貴族に相当する存在だ。


 ろうそくを模したりよくとうの下で、長机を囲む複数のかげれている。そのりんかくいつぱん的な人間に比べサイズ差が激しく、半分以上が頭部にとつを持ち、二割ほどはそもそも人の体ではない。フギムニは居並ぶ中では最も人間に近いが、かのじよもまた角付きではだは青い。


 周囲のかげいつせいに頭をかかえたりてんじようを見たりする。全員の挙動が「来ちゃったかあこの話題……」という内心を表明していた。


(ふぎ~~~~……! 私もだよクソ!)


 心中で毒づきながら、一通り弱音が出そろったのを見て取り、フギムニが再び口を開く。


「どうにかしなければならんだろう……もう三年だ。ディスパテ殿どのと大半のせいりゆうを失っている以上、戦力はともかく軍としてのていさいは保てん」


「しかしてりゆうだ。先だってぐんも失った今のぐんりゆうを遊ばせているゆうもない」


「だが他のじゆうしんの軍に丸々むには戦力が大きすぎる」


 やや思案。ぷにぷにとしたスライム状のかげが小さくきよしよくしゆする。


ぶんかつしてみ、各軍の戦力を底上げするのは? りゆうはどいつも単体で戦力になろう」


 フギムニにとっては想定内の意見だ。なので、想定していた意見を返す。


「それがとうではあるが。あの気位高くてあつかいにくいりゆうたちが、軍を割ることに同意するか?」


「残存の筆頭はだれか」


「ゲハンノス殿どのけた。コキュトー殿どのだ」


 聞いた者たちいつせいに天をあおぎ、てのひらで目をおおった。


「「「「「一番めんどくさいやつじゃねーか!」」」」」


 フギムニの苦り切った表情が、あかりに照らされる。整った容姿といえる。人間の基準からすれば若そうに見えるが、これでも百はえている。ちなみに、こんだ。


「あーもう……どうする、通達。だれか」


おれやだ。りゆうって頭もいから文官オレらめてるし」


(私だっていやだっつうんだよ! むに~……)


 フギムニは頭をかかえる。おうオルデンが健在のころは良かった。おうこうによりかのじよの策も通り、じゆうしんの軍も思うように差配できた。


(オルデン様ほうぎよからこっち、じゆうしんやつらは言うことなんも聞きゃしねー……。だから負けるんだろーが! 立場的には同格だぞちくしょー!)


 ひとしきり心の中でグチを言い放って、フギムニは表情をもどす。


「まあ……りゆうたちの事はまた別に考えよう」


「そうしよう」「後にしよう」「右に同じ」「忘れたい」


「おい最後のだれだコラ」


 異議なしと言った具合にかれら──ぐんの軍令部たちは議題を次に移す。激変を続ける戦略図はかれらに休息を許さない。


(全く──三年前のあの日から、何もかもが変わってしまったな)


 フギムニが、かつてのおう城があった方向へ視線をやった。


 戦争は続いている。おう軍にかつての勢いはもう無い。支配地も半分以上が取り返された。が、それでもだ終わってはいない。きつこう状態にある戦線は多い。


(和平こうしようも考えるべき時だが……されたままではそれも出来ん。というかそもそもじゆうしんどもがなつとくすまい。どうにかせねばな。あの気難しいりゆうを、何とかやる気にさせられれば──)

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