四章 勇者、久しぶりに本気出す(7/10)
十堕臣。魔王オルデンが率いた魔王軍、その十に分かれた軍団の長であり、魔王軍の最高幹部
堕
勇者アルヴィス一行は戦いの中でこの五体を打倒し、その軍勢を
そう、十堕臣は軍の長なのだ。このような
(
目の前の相手から感じる魔力はかつて戦った十堕臣達と比べても引けを取らない。
そして、かつてのアルヴィスの仲間
(今の俺よりは間違いなく遥かに強いってことだな)
彼が想像していたよりもさらに大物が出てきた格好だ。
「何でまたこんなところにいるんだい、我ら不死者の御大将、
「いやはや全く、何でだろうね! どうしてこうなったという感じさ!」
そのまま数秒。アルが首を
「
「うわっびっくりした」
「魔王が倒され、後方の統制は混乱し、その末に私は攻め込んでいたバルキア中央で孤立! 連合軍により包囲! 総力戦!
「──
アルも聞いたことはあった。光明神マルドゥを
「それで、ここまではるばる逃げてきたわけか」
「部隊長の首を二つほどもぎ取ってやったがね! 何とも恥ずべきことだ……しかし! その苦難が私をまた一つ上の段階へと導く! はずだ! この地を
べらべらとセッケルが述べる内容に、アルがぴくりと反応する。
「は? なんつった? 新たな魔王?」
「決まっているだろう! 魔王オルデンが
両手を広げ、
「だ・と・いうのにだ! せっかく配下にしたオーク
セッケルはそこで再び、アルを見た。ついでのように
「ここまで長々と
「あー……そう来るか」
つまりは。最近のアルの行動が、この
「しかも私の血でグールになっているはずの村人もあの通り元気なものだ。それも君かね?」
それに、アルがぴくと剣先を揺らめかせた。思い当たることがある。
「血……? そうか、『
通常、ヴァンパイアは血を吸う際、血を
「御明察! ちんまりちんけな村の
「教えてやらん」
返答はノーモーションからの
(魔力の壁?)
「ずるくないかねぇ!? 私にこんなにも赤裸々語らせておいて!」
「そっちの都合じゃねーか! ここで
未知の能力を
格上との正面切っての戦闘になる。アルは聖剣を起動した。黒剣が白く光を放っていく。
「神聖剣の
セッケルはアルヴィスを知ってはいても、抜き身の聖剣スカットゥルンドを直接目にしたことはない。アルの正体にも気付いてはいなかった。
「私の後追いで兵が村へ向かっている。かつての我が軍に比べれば
セッケルの言うことは
「さて……お前は俺より強い、かもしれないが」
アルはちりちりと手骨を
「強い方が勝つなら、
魔王と
◯
「来たぞ……」
ガンティが誰にともなく告げた。
「構えろ!」
ゾンビ
(アルは、敵には以前私たちが倒したゴブリン
柵のすぐ後ろにいる
「
ヘリャルが
(ゾンビ
しかし、彼やゴーレムのような、グール化している者
ゴーレムグールを前面に出し、弓を受けながら
「行ってこい、元大将」
「ギ、ゴ……」
ゴーレムグールがひゅうひゅうという風の音を
「
ガンティの号令が響く。ヘリャルは気にせず前進を続けさせる。人間の
「ギ……!」
しかし、想像よりも
「あぁん……?」
「第二射! 構え!」
ヘリャルは舌打ちして柵の向こうにいる
「んだと……? あんな村人が
ヘリャルが気付かなかったのも無理はなかった。彼は日中に村周辺に
「
ミクトラの号令。
「ゴ、ゴゴ、
ゴーレムグールが怒りに打ち
「おい!」
ヘリャルが
『あの村には興味がある! 私の魔血から生き残った人間
そういったわけで、ヘリャル
しかし前を行かせていたゴーレムグールのパイロストライクは
(ちっ、野郎の人間への敵意を甘く見ていた……数人欠ければ
ヘリャルは苦々しくそれを見る。
「させるかっ!」
鋭い声。号令を行っていた者の声だ。そこで、ヘリャルはその姿に初めて気付いた。
「ありゃぁ……ミクトラ・クート。
(ままならねえもンだなおい。これで死なれれば
ゴーレムとミクトラ。距離は詰まって穴を挟み十メルほど。村人
ミクトラも、アルから説明を受けてはいる。村人へ簡単な指導をしたら村を抜け、駐留軍のいる町から応援を呼んできて欲しいとも言われた。
しかし、ミクトラ・クートはその心根が貴族なのである。彼女はアルへ答えた。
「
セクメルの一件から訓練を重ね、体の一部ならば
(しかし、あれを食らえばそこで終わる。剣で
ミクトラは剣を収める。代わりに持つのは村にあった
「合図と共に最後の
言葉と同時、振りかぶる。右肩から先、
「我が目に従イ、触レ、
誘導補助
「図に乗るでないわ寄せ集め
その場にいたほぼ全ての者
炎と煙が一時的にその場の者
(ヌグググググ! おの、レ! おのレ! 人間! ここまでしてモ、まだカ!)
そこへ、宙から炎と煙を割ってゴーレムグールの目前へミクトラが飛び現れる。
「「な────!」」
ゴーレムグールとヘリャルが
ミクトラとしては当然の帰結で、これしかなかった。まがりなりにも全身の
(ならば、取り得る手段は
迎撃から
「おおおおおおおおお!」
煙から現れたミクトラは
だが通常であればこれでも足りない。ミクトラの攻撃力では、
しかし彼女は考える。このゴーレムグールの素体があの時、遺跡でアルが倒した相手ならば、
(あるはずだ。彼が首を貫いた、傷跡……!)
ある。ゴーレムグールの首、肉で埋もれた奥に、平突きで
「ゴォ、オオオっ……!」
ゴーレムグールが腕を払おうとする。
「遅ォいッ!」
その内へ入り込み、
「ぬうぅぅっぅ……てぇぇぇえっ!」
振り抜く。岩が
気合いの叫びは同時に号令でもあった。完徹で用意された残り少ない矢の最後の
「ァァオオォオオオオ……」
言葉にならない
「夢は終わりだ……眠れ」
しかし彼女は美しく
「……いやはや」
ヘリャルは──ゴーレム……いやゴブリンメイジには悪いと思いながら──賞賛の念を押さえられない。大した
「ミクトラさん! 早く戻って!」
後方からの声にミクトラが反応する。去り
「ミクトラさん!」「すげえよあんた!」「お見事でした!」「やれる、これでやれるぞ!」
口々に賞賛で迎える村人
(だが、それを
彼女がアルから聞いた情報では、ヘリャルもまたグールと化している。
逆に言えば、後はそれさえ防げれば、穴と
「もう弓は無いか」
「
「
矢もほとんど残っていない。
「あと一頑張り、要るか……」
ミクトラは自分を
「やれやれ。どうしたもんかねえ……」
対し、ヘリャルは
(正面からの殺し殺されなら、
村人
手振りでゾンビ
「ま、いいかめんどくせえ。元からこういうのは趣味じゃねえしな」
ヘリャルが剣を納めた。そのまま、彼は
「何を……?」
「板挟みの
ガンティの疑問に答えてやる。
「出てきて戦うなら相手してやらあ。けどそんなつもりもねえだろ? なら、せいぜい
村人
「ヘリャル、貴様は──」
「ミクトラ。断っておくが、そいつら逃がそうとか考えんな。そうなればこっちも出方を変えにゃならねえ。
疑念の目を向けながら、ミクトラも村人
(まー、この辺りが契約違反ギリギリだわな……そっちはどうだい、骨と鬼の両大将)
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