第四章 世界の求めかた
第四章 世界の求めかた(1)
「……どうしますか、
「イェーセンのエーゼンブルグ
「
「
「どうする」
「どうする?」
「…………デュケナン大司教です」
「は?」
わたしの言ったことに、ものすごく意外そうな顔をした評議会のかたがたが
つい力の無いため息を
「デュケナン大司教を
……
「おお」
「なるほど、そのとおりですな」
「それでは、
「それには
「平和条約がどのような条件になるか、おそらく、そうとう分の悪いものになります。戦時
おそらく、
「デュケナン大司教が
話している
「デュケナン大司教がお
まるで見計らったかのようなタイミングに
「わかりました。どうぞお通ししてください」
「ようこそお
「この老骨がお役に立つとあるならば、いつでも
いつものようににこやかに、その老人は現れました。
「それで、さっそくですが、オルデンボーとの和議は可能なのでしょうか?」
「ええ、その件ですな。お耳にしてございます。私めの身に余る大役なれど、名高き血船王に心を
それを聞いて、評議会は色めき立ちます。
「それはありがたい!」「さすがは大司教
しかし、わたしはそれだけではまったく安心できませんでした。
「では、
重ねて
「エーゼンブルグ
「よ──40万枚!?」「イェーセンの
その金額と条件は、このまま最後までファヴェールが
イェーセンを出口とする貿易が王室にもたらす利益は、鉱物資源だけでも年間でフィセター銀貨5万枚です。それを失ったうえに40万枚など、どう考えたところで
「そのような要求、とても吞めるものではありません。もう少し、条件を
わたしの質問に、デュケナン大司教は
まるで、子どものわがままを聞いた、とでもいうように。
「さて……私めにはこれが
「それは……」「ううむ……」
うなり声のような評議会員たちの
それを
「しかし──救いを求める
「お、おお!」「まことでありますか!?」
にわかに
「あちらとて、最初から満額
どうにか礼を
「……誠意、とはなんですか?」
デュケナン大司教は、わたしを見て、告げました。
「ファヴェール王家に
「────」
父上が教会から
「そ、れは、無茶な……」
さすがに評議会からもそんな意見が出てきます。
しかし、デュケナン大司教は
「教会領は国の領土とは別でございます。ファヴェールに動乱の
「む、う……」「それは……」「いやしかし」
いかにも
もはや
「私めのできる、
天上の国におわす我らが父のため。どうかその身を冥府の底へ投げ込むがごとき行いはしませぬことです」
その、言葉を聞いて。
わたしの
『お前は父を天上の国ではなく、
天上の国。
ウィスカー
『デュケナン殿が教えてくださった。やつは、とんでもないことをしております!』
商人を集めたあの日、そう
父上の死期をどうしてオルデンボーが
絶えずわたしを
それは──
「──あなたはッ!」
思わず机を
「……どうしましたかな?」
大司教が、とぼけた顔でそう聞き返してきます。
ホルスターからおもむろに
「……『
──そんな夢想が、
もちろん、ここは戦場ではありません。
ただし、
「わたしは最近、同じ言葉を言われたことを思い出しました」
「あれは、あなたから聞いたのでしょうか?」
──その
針のように細くなった目が、わずかな間を置いて
「さようでしたか。大変失礼しました、どうやら老境の口が過ぎたようですな。
「……いまはあまり聞きたくありません。用件が終わりましたら、お下がりください。それとも、なおも
「いいえ、いま述べたもので全てでございますとも。……
「大司教」「大司教閣下」「デュケナン
貴族たちが
「…………」
あとに残されたのは、貴族たちの気まずそうな
「……
「なんですか?」
「
いかにも親切そうな声で、
ひとりが言い出せば、またべつのかたが言います。
「
「そうです」
「
さざめく会議場で、わたしは指をひとつ立てました。
「……まだ、
告げた内容に、
「「「──
「今日はこれまでです。もう一度、今日のことを練り直したら、会議を開きます。その時に決定するとしましょう」
いまにも
……そうできるのも、もう最後になるでしょう。
小走りに王宮の
「もう、終わり……ですね……」
すべてが、そう示していました。
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