第二章 オークションにかける! ぼっちな姫の癒やしかた(6)
◯
やってしまいました。
「この
父上にお
わたしが何日もの時間をかけて必死に
「父上、あの、ゲーム理論という考え方があるのです」
「そんなことは聞いておらん! 教会との約束を
「あれはただの
「いいから早くどうにかせよ! それと──お前は、また
「
「おぬしの
父上の疑いは晴れませんでした。そして当たっています。やっぱりごまかせませんでした。
「その……ナオキさんは
あのかたを守るために、少し真実に引き寄せます。本当は
「……なら
「わかりました、父上」
「解決できぬなら、
「そんな、父上っ!!」
「やかましい! 話は終わりだ、早く取りかからんか!」
「弱りました……」
「おつかれさま。
ナオキさんのお
立ちのぼる
「ありがとうございます。ほっとします」
「どういたしまして。それで?」
「……
正直にそう言ってしまえるのは、ナオキさんの前でだけです。
「会議はかなり
「教会に手配した
「おいおいなんでだ? それはまずいぞ」
「
「いまは戦争に使う金を少しでも増やしたいんだ。
「わかっています。解決策を考えなくてはなりません。……ナオキさんのお命のためにも」
「待ってくれ。いまなんて言った?」
さすがに
「それが……父上が『解決できないなら
「
「あ、もし失敗してもナオキさんは
「……そうならないように
この
「そうですね……」
お茶を飲みながら少し考えてみました。
「修道院がだめということでしたら、やっぱり、商人たちから買うしかないと思います。わたしにはつてが無いので、いまから探すのは大変ですが……商人は品物を売る相手を常に探しているはずです。フィセター銀貨で数万枚にもなるこのお話なら、
わたしが口にした解決策に、ナオキさんが首を
「というかだな、物を売り買いするなら
なぜ教会? なんて
「……ナオキさんは、なんでも知っているようで、たまになにも知らないようなお顔をされますね」
「悪いね」
「いいえ。かわいいです」
「……
きょとんとしてから口を
「修道院は自給自足で、畑も
「なるほど。商人より生産者から直接買うほうが安いっていうことか」
「はい。それにもうひとつ。教区の農民から作物の10分の1を教会が
「教会は
「昔はもっとお金持ちだったと思いますよ。司教領は
ですが、ファヴェールが独立したばかりのころ、司教領の特権と領地などをすべて王室が
「へえ、教会から見ればなかなかえげつない政策だなそれ」
「必要に
「
「まあ」
「おっといまのは正直すぎたか? 忘れてくれ」
失言を
「いまのは少し
不敬罪にもなりそうなほどのお言葉でしたので、ただで許すのは公平ではありません。
わたしの言葉に、ナオキさんは小さく笑ってうなずかれました。
「今度から用意しておこう。それで、商人から買うのはそんなに
それが問題です。
「わかりません」
「え」
聞き返されてしまいました。もう一度口にします。
「わからないのが問題なのです。あちらが提示した金額は高いのか安いのか。なぜその値段なのか、わたしにはわかりません。
ですから正しい値段にするためには、そうとうな時間がかかります。世の中の商人たちは、王室には
相場を調べ上げて、値切るために
その時間こそがいまは
しかし、
「なんだそんなことか」
ナオキさんは、なんでもないことのように、あっさりと言い放ちました。
「それなら、相手の言い値で買えばいい」
「──そっ、そんな買いかたをしたら、
王室
酒保商人は
王室
ですが、高い値段で物を調達しては、その目的は達成できなくなってしまいます。
「
「しかし、商人たちには横の付き合いがあります。きっと「王室からの注文ならこれくらい」という打ち合わせをして価格を
「言い値は談合価格になる。まあそうだろうね。……だけどさ」
ナオキさんはわたしの言葉にうなずいてから、ふと目をそらして、
「人がだれかと心から分かり合うことは、
わたしを見ないで言った
「ナオキさん……?」
「──つけいる方法くらいあるって話さ。だけど、きみの敵が増えるかもしれない。それでもいいか?」
ともあれ、わたしはナオキさんの質問にお答えします。
「ナオキさんの言葉を借りて言えば──敵を増やすコストより王室
お金は正しく手に入れることよりも正しく使うことを心がける。それが重要なことなのだと、ナオキさんは言っていました。
「わかってきたね。それじゃリターンを取りにいこう」
「はい。具体的には何をしますか?」
「簡単だよ。
「いちばん得をする人ですか? ええっと……
ああ、そうです。
「片方を
「発想が中世だな! いやそうじゃない。いいか?
〝自白したら
それと同じだ。
そんなナオキさんの口ぶりは、お
「ふふふ、本当に〝
「
笑ってそう否定されたナオキさんですが──具体的な手はずを説明していただいたわたしは、それが
わたしの父は〝
であればきっと──ナオキさんの
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