第二章 オークションにかける! ぼっちな姫の癒やしかた(3)
◯
わたしがナオキさんという心強い味方を得てからしばらくの間、以前にも増して数字と
確率の計算、フェルミ推定という考えかた、
そうしたさまざまな話をしながら、本筋である私たちの
「ファヴェール王国とオルデンボー王国の戦争は、かつての圧政や独立戦争やらの
「戦争にちがいがあるのですか?」
「勝利条件が異なる。たとえばいきなりナイフを向けられたとする。
「その判別はどのようにしたのですか?」
「理由その1。こう言うと悪いんだが、
理由その2──」
「まったくそのとおりですね。それでは次をお願いします」
「
「常備兵力である青色連隊は動かせず、そのへんの村から集めた
ランチェスターの法則によれば、『
「兵隊の練度なんて、隊ごとにバラバラですし、数字にするのは難しいです」
「そうだな。でもやってみよう。新兵が3人いる。敵は熟練兵。同じ
「
「ソアラ、きみの推定だと、兵員数と武器性能比が同じなのに
「……そ、そんな考え方、したこともありませんでした」
「さて、これをもとに
数値的には4020対7360。1:1.831だ。向こうにはおよそ1.8倍の戦力がある。ランチェスターの第一法則だと、戦力差は3340。新兵だけで戦力差を
「相手がやる気なのです」
「この〝戦争をやる〟が
「ゲーム理論における
・2人とも
・どちらかが自白したら自白した方は
・2人とも自白したら2人とも
お
「
「こういうときに、利得表というものを作るとわかりやすい」
【利得表①を参照】
「これが利得表。左がAがもらう利得。この場合は得どころか
【利得表②を参照】
「つまり両方とも自白することになる。こいつらは
「えっ、でも相手が
「言っただろ? 『お
「戦争をしない場合の利得……せいぜい、兵隊を
「まあそうなるな」
「戦争には経費が必要だから、経費以上の利得を期待して戦争をする。敵は兵隊を集めた金より多くの
「期待値、ですか?」
「感覚的に言おう。ここにクジがあるとする。当たれば銀貨10枚で、はずれだともらえない。クジは1枚につき銀貨1枚。5枚に1枚当たりがある。買うか?」
「はい、買うと思います」
「じゃあ銀貨4枚しか当たらないくじなら?」
「買いません」
「そうなるよな。かけたお金以上の利得が期待できるのか。人はそれを計算して
期待値:X はずれの確率:P 賞金:M
X=(1-P)×M
「これに当てはめると0.8の確率ではずれるくじの賞金が銀貨10枚なら、期待値は銀貨2枚。くじの代金は銀貨1枚だから、期待値の方が大きい。だから買う。
だが賞金が4枚だと期待値は0.8枚で、経費の1枚より低い。0.2枚のマイナスだ。買いたくなくなる。戦争もこれと同じだ。いまのオルデンボーはファヴェールが弱っていて、勝てる確率が高く、得られる利得も大きいと
「ということは、勝つ確率を減らすか、得られる利得を少なくすると、戦争をそれ以上続けなくなるのですね?」
「難しく言ったわりに当たり前の結論になって悪いが、理論上はそうなる。ただ、この手順を知っているかどうかで、〝感覚的に〟見ていた戦争状態を〝数値的に〟見直すことができるだろ? あとはどうすれば、この数字に変化を起こせるかだ」
「
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