第一章 ゲーム理論で分かる! 男装王女の救いかた(4)
◯
「異世界って、つらいな……」
結論から言うと、
機械がひとつも無いような大自然の中で人類が暮らしてる時代というのは、
大自然の中に放り出された
しかたないので、とりあえず人の姿を探した。近くの村に行ってみて不思議なことに言葉が通じたまではいいんだが、悲しいことに、行商人ではないこの国の名前も知らないなにもわからないお金持ってない、とかのたまう
そのうち腹が空いてしかたなくなったので、思いっきり頭を下げて食べ物を
どこかへ行くからもっとくれとせびって食料を手に村を出て、行くあても無いので最初にエレベーターから
その
そうして中に入ると、
映画をよく見る人なら、「地図に写真とか
簡単に言えば、連想ゲームみたいなものだ。たとえば『
しかし、いま目の前にあるものは、そういうアイデア発見とは
ざっと見た限りだと、勢力図のようなものだろうか? 首をひねる。近くにあった木箱の中を
目を通してみると、月ごとに行き来する船の数、移動する
生データがこれで、整理したものが地図に
と、そこまで気づけば、あとは覚え書きの中にある『?』が気になる。
過去のデータのうち、1月と3月はあるけど2月は空白、という具合に
数字を見れば放っておけないのが、数学者のさがというやつで。小屋を無断使用したお礼がわりに、
箱の中の紙を借りて数字を書き出し、グラフを作り、導き出した数字を自分のメモ帳をちぎった紙に書いて
パソコンがあればこの程度はエクセルに
計算式はもう分かっているので、ひたすら手を動かす。数学者的に言うところの「
「異世界はつらいけど、やっぱり数学はいいなぁ」
まったく、こればっかりはこの世界でも変わらない。
数時間歩けば翌日には筋肉痛になる足では行けない、遠くの国を見ることができる。
数学は現実世界のあらゆる制約を持たない。
そこにあるのは時間も
最後の『?』が
満足したし、これで独断でもらった一宿の恩も独断で返し終えたというわけだ。
よし、
そうして
明日の目覚めは気持ちの
激痛。
「ぁ痛ァ──っ!?」
なにかに腹を
もういい加減にしてくれよ!
激痛をこらえて首を持ち上げる。──が、目を開けても真っ暗だ。
そのとき、
腹に生じた
持ち上げてみると、それは
「い、いたた……」
小さなその声の主を見るために目の前から
「……えっ?」
光を透かす色素の薄いロングヘアに、
そんな
「夢かなこれ」
ついつい、手近にあった足を
温かいし
夢だけど、夢じゃなかった。夢だけど、夢じゃない。
「はうっ……!?」
「おっとごめん、つい」
「う、動かないでください!」
「……
少女の太ももに手を置いたまま、
「あっ、え、えっと、
「……
「ありました! 動くと
うわおちがった!
少女が後ろ
これゲームで使ったことがある。中世ファンタジーものの洋ゲーのピストルだ。顔面につきつけられたそれは油
本物なのかどうか、自分の顔面に
「オケー。お
ぽふぽふ、と手で
「……ど、どこを
言われて気づく。
「あー……足、だな、きみの。どうりで
「手を
無理だったらしい。
両手を
「聞いてくれ。
「……では、あれをやったのもあなたではないのですか?」
「あれって?」
「わたしの大事な地図に、手を加えた人です」
「あー……」
まちがったかもしれない。
よく考えてみれば、自分の研究ノートに勝手にいろいろ書き加えられていたら、気分が悪くなってもおかしくない。
だけど
「そのとおりだ」
「……あれがなにか、知っていたのですか? 読み書きができるのですか?」
なぜだかとても
「
そう言った
「わかるんですか!?」
ドン! と頭の
まさかの
間近に
「わ、わかるよそりゃ」
「では、あの数字はどうやって、なぜ書いたんですか?」
「計算しただけだ」
「計算した、だけ……!?」
「ホルト・ウィンタース法だよ!
「計算式で予測なんて……そんなことが……!!」
まばたきしてないんだがこの子。
そんなにあれに
──あるいは、
急にバツの悪い思いが
「悪かったよ勝手に
ぽたり、と
泣くほどダメだったのか!?
「えっ……!?」
息を
「あっ──み、見ないでください!」
「お、おおお!?」
ばふっ! と勢いよく
「ごめんなさい……その、わたし、そんなこと言われたの、初めてで……」
「〝そんなこと〟ってのは?」
「き、
「……そんなこと言ったっけ?」
たしかに
「言いました!」
がばっと身を起こして、
「わたしの、書いたものを見て、
「それのことか」
たしかに言った。よくできてる。
「わ、わたしは……あれは……わたしなりに、必死で考えたんです。長い間、たくさんの記録を集めて、
ぎゅう、と
「人に見せたら、気味悪がられて……変だって思われて……理解、してくれなくて……!」
苦しげに息をして、
「だ、だから、び、びっくり、したんです。わたしの、作ったものを見て……
ああ、それは。
数学的な考えは、時として直感を裏切る。5%のクジを20回引いても100%にはならない、というように。
直感を裏切る数学を信じることより、そんなことを言い出す
──それは、どんなに
祖父に認められたい一心で
このデータが正しいかどうかは、
「きみは──」
「──よく
細い指先が、
「…………はい」
少女は重ねた手に
やがて、ゆっくりとその目を開く。
「そういえば、お名前をまだ聞いてませんでしたね」
目から
たおやかなその手を差し出してくる。その小さな手を
「わたしは、ファヴェール王国第一王女、ソアラ・エステル・ロートリンデと申します。ソアラ、とお呼びくださいね」
「
「よろしくお願いしますね、ナオキさん」
「よろしく、ソアラ」
「……ところで王女ってジョークだよな?」
「いいえ。わたし、あまり
「……
「お、
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