第一章 ゲーム理論で分かる! 男装王女の救いかた(3)
「王女
軍馬が並ぶ
まとめ上げた
貴族の
「馬の数には
わたしは銀貨を入れた
「いつものようにお願いしますね」
わたしの手の下にある
「……馬具をつけて、門番には
「そのとおりです」
兵士はのっそりと立ち上がり、わたしの希望どおりにすることを選んでくれたようです。毛並みの
「……ところで、今日の会議から帰る
「なんですか?」
「……戦争が近いってえのに、
ため息を
わたしの話のどこを聞いていたら、そのようなことを思われるのでしょうか。その評議会のだれかは。
「そのようなことはありません。
「兵隊の間じゃ良くない
「お
むしろ、兵の間に弱気が広まっていることのほうが気になります。
「そうですかい……それで、
馬具を取り付け終えた軍馬をこちらへと
わたしは
「ありがとうございます。ですが、不要です。そう遠くに行っているわけではありません。それに、武器もきちんと
「でも──」
「わたしが
無作法かとも思いましたが、わたしは会話を打ち切って馬を進め、
ふと気になってこっそりと後ろを見ると、
……今日の用事を済ませたら、しばらく間を空けたほうがいいかもしれません。戦争が近い時期に王族が
小さいころから、わたしが
わたしはどうしても、『当たり前のこと』が当たり前にできないからです。
聖書をもとに書かれた法はこの世でもっとも尊いもので、貴族の子女は
この世を回すそれら大きな歯車と、わたしの自分勝手な歯車では、まったく歯が
気にしなくていいことばかり気にかけてしまい、人を
それがわたしという、不出来な王女の評価でした。
馬に乗って
家臣団も使用人たちも、兵士や市民たちも、やがてはだれひとりとして、わたしを見て
小さな
細く長く、息を
少しだけ、気分が楽になります。とはいえ、こんなことをするために、ここまで来たのではありません。
改めて前を向き、馬の足を少しだけ速めます。
わたしは
物事を考えるときは、だれにも見つからないようにしましょう、と。
城内では無理なことです。使用人に見つからず歩き回ることなどできるはずもありませんし、どこかの部屋を立ち入り禁止にしてしまえば、必ずその〝秘密〟を
わたしは
もちろん、簡単には見つかりませんでした。何度かの失敗を経て、やがてわたしがたどり着いたのは、地元の
そこには、小さな
話によれば、この国を作った父祖より先にこの地に住んでいた人々が作った
昔は
わたしは手を
その小屋が、わたしの秘密のお勉強部屋になりました。
あまり良くないことだと、わかっていました。ですが、たくさんの人と
そんな
「?」
わたしはその時、
地面をよく見てみると、とんでもないことに気づきました。
馬上からはわからなかったのですが──小屋のまわりには、わたしのものよりも大きな
つまり、わたし以外のだれかが、小屋に近づいたのです。いままでに無かったことでした。
一大事です。どうしましょう。
小屋には金品などは置いていません。ただ、ここはわたしにとっては大事な物と場所なのです。
かといって、すぐに助けを呼びに行くのも考えものです。苦労して作り上げたわたしの秘密のお勉強部屋が、また一から作り直しになってしまいます。
「ど、どうしましょうか……?」
困り果てたわたしは決めあぐねてそう口にしますが、ここまで連れてきてくれた
……はっ、現実
あらためて小屋に向き直ります。それで気づきました。正面の
たくさんの人間が出入りするなら、
わたしは自分の居場所を守るために、強く決意しました。
……いったん中を
もしかすれば、ここが王家の土地と知らずに雨宿りや一晩の
いまはもうだれもいない、ということもじゅうぶんにありえます。
行動を決めれば、必要なことがわかりました。
普通の銃とはちがって、大人の男性なら片手で持てるほど短い
練習以外できちんと使うのは、これが初めてです。
「────」
ギイィィ、と
窓を開けてから、息を殺してしばらく待ちます。中にだれかがいれば、気づいてこちらに来るかもしれません。手の中の
「…………」
ですが、中からは足音ひとつ聞こえませんでした。
やっぱり、もういないのでしょうか?
開いた窓から、こっそり中を
それでは、次に気になるのは、なにかが
他のだれかが見ても価値の無い物ばかりですが、わたしにとっては大事なものがたくさんありました。
ですから、まずもっとも大事にしている壁を見ます。
「えっ──」
わたしの
ありえないことが、起きていました。
そこにあるのは、大きな地図と拡大した地図を
海路を
そうしてできあがった地図は、わたしが見れば周辺世界の勢力を一望できる便利な世界図です。ただし──わたし以外の人間にとっては、
同じものを使用人に見られた時には、わたしが
だれにも理解されることのない、わたしだけの大きな覚え書きなのです。だからこそ、苦労してだれにも見られずに考え事をする場所を求めて、作り上げました。
──そのはずでした。
「そんな……!?」
地図には、見たこともない白い紙がたくさん増えていました。その紙には数字が書かれています。そのうち数枚を見た
そして、手もとの資料と、地図に
「……合っています。これも、これも……同じ……!」
資料が足りず、あるいは、わたしには読み解けず、『?』を置いておいた空白地帯。
今日、手に入れたばかりの資料で、そこを
わたしにしか価値の無いはずのものが、わたしの手によらず書き換えられたばかりか、その価値をより高めていたのです!
「そ、そんなことが……? いったい、どうして……」
もっと、きちんと見なければいけません。
ぐに。と、そんな
「うおおっ!?」
「きゃああっ!?」
「ぁ痛ァ──っ!?」
わたしは、出会いました。
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