第一章 ゲーム理論で分かる! 男装王女の救いかた(2)
毛足の長い
ああ、これは良くない話のようです。
「来たか、ソアラ」
「父上に呼ばれれば、わたしはすぐに参ります。お加減はいかがですか?」
「ふん。いまさら変わらん。今日は悪くない。だが、どのみち長くもない」
自らの
老いと病に
「またやったそうだな、ソアラ。評議会を
自らのことを口にする時よりも、わたしのことを話す時のほうが、父の感情はわかりやすくなっています。
いまは……
「困らせているのではありません。わたしは、有益な話をしたいだけです」
「つまりお前は、わが国の重臣全員を
父上はだんだんと
「気持ちだけで勝てるほど、敵は弱くありません」
「
ピシャリと
だめでした。わたしはまた
なぜでしょうか。こういう場面で正解の言葉を選べた
「私ももう長くない。だからこそ、実の子であるお前にいまから経験を積ませてやろうと、努力してきた。だが政務を任せてから半年足らずで、この部屋を
「落ち着いてください、父上。わたしは、わたしなりに──」
「わたしなりにだと!? お前の考えなど、どうでもよい! まだ玉座に
「…………いいえ、父上」
わたしは
「こうなるとわかっておれば、さっさと
「父上の言葉が正しいことは、よくわかっています」
「ふん、どうせまた口だけであろう。お前は聞く耳を持っておらん! 教師をつけたときも同じだった! 熱心に聖書と律法書を
どうしたことかと思えば、お前は書を読んで学んでいたのではなく、書の中にある矛盾を探しておった! 同じことをせぬよう注意したのに、お前はそれから何度も何度も、教会や大学の講師を
「あれは
「うるさい! 私がやることにいちいち
この──グ、ゴホッ、ガッ、クゥ……!」
ずっとまくし立てていた父上が、胸を
「父上!」
「寄るな!」
「っ────」
わたしは思わず
「……グゥッ、ウウ、ヌ……!!」
「陛下!」「
使用人たちが
たくさんの手に身体を支えられて、ゆっくりと身体を横たえる父上。実の
前のめりになっていた姿勢を正して、わたしは一歩下がって一礼しました。
「わたしは失礼します。興奮されてはお身体に
父上からの返事は、ありませんでした。
部屋を辞した私の背後で重々しい
「これはこれは、ソアラ王女
横合いからそう声をかけられました。見れば、聖職者の
「ご
「おかげさまで息災に存じます、デュケナン大司教。ご
「こちらこそ、おかげさまで老健でおります、
ご
「お話し合いに参上したのですが……陛下のお具合は、いかがですかな?」
「ご心配には
これは
しかし、王ともなれば体調の
もっとも、こうして直接
「ご助言感謝します。これはかたじけないことです」
大司教は深く
「いやあそれにしても、
「わたしには過ぎたお言葉です。わたしなど、いまだ未熟な身です。──お会いできて
わたしは一礼して、一歩身を引きます。あからさまな話の切り上げかたに、
「おや、お
「父上とのお約束の
「これはお
「ええ、ありがとう存じます」
にこりと笑って、わたしはその場を去りました。
少し、不自然で
とはいえ、それはしかたがありませんでした。
なぜなら、わたしがこのあとに予定しているのは──だれにも、たとえどのような人であっても、話し聞かせていいことではないのですから。
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