序章 願いの数式(2)
「ああ? そんなもの無理に決まってるだろ」
「やる前から
「失礼なやつだな。
昔お
「じゃあなんで無理なんて言うんだよ! 今回のガチャなら絶対SSRもらえるって! 見ろよこれ、出現率5%! 単純計算で20回で1枚当たるんだから、確実だって。だからちょっとでいいから金貸してくれよ!」
「10連ガチャ1回目は出なかったけどさ、あと1回だけ
なのでそんなことを
イヤだ、の一言だけで無下に断ってしまっても良かったが、臨時とはいえ
説明する5分間をコストとして
「言わせてもらうと、出現率5%のガチャを20回やった時に目的のランクカードを引き当てる確率は、100%にはならない」
「えっ、なに言ってるんだ。5×20で100%だろ?」
「それはクジの総量が限定されている場合だ。全部で20個しかないクジに1つの当たりなら、20回引けば必ず当たりを
「えーっと……そうだな」
「だけどガチャの確率は不変でハズレも当たりも無限だ。5%のまま20回クジを引いていく。ハズレを引く確率が95%。パーセンテージから実数に直すと0.95」
メモにわかりやすい表記を書いて見せる。
ハズレ → 95% → 0.95
「ここから20回ガチャを引く時、全部がハズレの確率を考える。95%を20回くり返すから、20乗だ。100%からハズレの確率を引けば、当たりの確率がわかる」
(当たりの確率)=1-0.95^20
「ほー」
「ここまでできたら、あとは簡単。
言いつつ、
1-0.9^20=0.6415140・・・・
と結果が返ってくる。
「つまり、当たりの確率はおよそ64%だ」
「64%……高いのか低いのかよくわかんねえな」
鼻にしわを
「お金を貸していいのは貸した人が幸せになると確信した時だけだって、お
「あれ、お前いいやつなのか……?」
わかってくれたみたいだ。良かった。
「がっかりしたらどうせ働かないだろ。だれがあの重い冷蔵庫を運ぶんだ。
「そんなに堂々と情けないことを言われたのは初めてだよこの貧弱
「人は
「お前のことだよ! なんでこっちを
「はいはい
「なあ、お前って頭良さそうなのに、なんで就職しなかったんだ?」
「しなかったんじゃなくてできなかったんだ。いろいろ事情があって」
「事情って?」
「……人に言いたくないくらい複雑な事情」
卒業研究に夢中になって、それがようやく終わって
苦い顔で
こっちもそのほうが助かるので、特に追加ではなにも言わない。が、
「じゃあ事情は聞かないから金貸してくれよ」
またもそんなことを言い出す。
「おいおい。さっきの説明をもう忘れたのか?」
「やっぱりやりたくなったんだよ」
やれやれ、と首を
「今度は説明しないけど
「このケチ
投げられた文句を背中に浴びつつ、ポーン、とちょうど開いた
臨時バイトも明日から別のところを探そう。
「まったく、ツイてない時はとことん悪いことばっかり起きる。いまの
ついそんなことを吐き捨てながら一階のスイッチを
「……あれ?」
もう一度
反応しない。
連打する。
反応無し。──マジで
「このポンコツめ!」
ガン、と
「あだッ!? いっ
ゴガガギャゴン! と、耳をつんざく
めっちゃ痛い。というかなんだこの
「おいおいおいおい……!」
ギィギギギ……と、金属の
次の
「あああ
高さ20mの場合『V=V0+gs』で『g=9.8』だから2秒後に時速70kmでジャンプすれば助かる! 無理だろ! 時速70kmで地面に!? 死ぬ!! これ
ポーン、と
「えっ……た、助かったのか?」
ありえない。だが、体のどこも痛くないし、足の裏には
「死ぬかと思っ………………………………………………」
思わず
もしかして本当に死んでしまっていて、ここは死後の世界、とかなのだろうか。
なぜなら、外に出て、ようやく見えるようになった
「……ここ、どこだよ?」
まったく見覚えのない、広大な河と森に囲まれた大自然が広がっていた。
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