第8話『黒鉄の救世主、見参!』
――――時は変わって再び現代。あかりは、ドン・アバドーンの潜むアジトの間際まで接近していた。ここまで来れば、もう小細工は不要だろう。
「
あかりの全身が光の繭に包まれると、彼女のブレザーは次第にその姿を変えていく。その身体は薄くも高機能の白いボディスーツに包まれ、四肢や頭部は硬質的なプロテクターで覆われる。
無限機煌の鋼鉄勇者神 アンリミテッド∞アカリ
Lv:3580
HP:27895748/27895748
EP:6004821/6004821
物理威力:1028643
物理防御:398705
スキル:
[コードSK:スパークル・カリバー]SSSS++
[コードGW:ゴッド・ウィング]SS
[コードZXM:ゼウス・エクス・マキナ]SSS+
[コードBB:ブラスト・ブレイザー]SS+
[コードBF:バーニング・フィスト]SS+
[コードRT:ラスト・タイフーン]S+
[コードPD:プリズム・ディフェンダー]S
[コードSD:シークレット・ドレッサー]S
[コードAR:アブソリュート・ライジング]S
[コードES:エターナル・サンクチュアリ]S
[コードLI:レジェンダリー・イデア]S
etc…
拳を握りしめ、その感触を確かめる。
「[コードGW:ゴッド・ウィング]!」
超圧縮プラズマエネルギーの光の翼で羽ばたき、超高層ビルの窓から直接乗り込んでいった。
「多次元指名手配犯ドン・アバドーン、大人しくしなさい!超次元窃盗罪、人類ならびに亜人類殺害罪、不正他次元転移、その他18427本の超次元刑法に基づきあなたを逮捕します!」
手の平に、時空警察手帳のホログラムを展開し突きつける。
「つ、捕まってたまるものか!儂はまだこの世の全てを喰らい尽くしておらん!」
バッタの頭を持ちでっぷりと肥えた男が、よろめきながらも上階へと逃げ去る。
彼こそがドン・アバドーンこと、
数十年の時を経た老いにより、かつての凶悪な怪力こそ衰えていた。だが、彼のとある能力はかつてよりも高まっていた。それは……
「ジェット機を……食べてる!?」
屋上に逃げたアバドーンは、突然ジェット機に齧り付き、そしてものの数秒でジェット機を食べ尽くした。
「逃がさない![コードBC:ボルテックチェイン]!」
電撃の鎖がアバドーンを縛ろうとする。しかし、そこには誰の姿もなかった。
「ふう、くわばらくわばら」
上空から聞こえた声の主は、鋼の翼を生やしたアバドーン。
ジェット機と融合して亜音速で逃げ去るアバドーン。必死に追っていたアカリは、彼が地上に撒いていたものに気がつかなかった。
「これでっ![コードBB:ブラスト・ブレイザー]!」
アカリの胸部から放射される熱光線を浴びて、アバドーンに生えた鋼鉄の翼はロウソクのように溶け、墜落していった。アバドーンを追って地上降り立った彼女が見たのは、恐ろしい光景だった。
ゾンビのように呻く人々。その額には、ツノのように寄生虫が蠢いている。これにアバドーンの脳波を浴びせる事で、宿主は意のままに操られる人形と化すのだ。
「この人たちは貴方の部下じゃないの!?どうしてこんな事を!?」
「『どうして』じゃと?こうすればお嬢ちゃんは抵抗できんからなぁ」
まるで角砂糖に群がる蟻のように、アカリに襲いくる人々。
「くっ……離して!」
自動車を取り込んで逃げ去るアバドーン。それを追うためには操られた市民を強引に振り払うのが手っ取り早いだろう。だが、彼らがそれに耐えられるとは思えない。空に逃げようにも[コードGW:ゴッドウイング]の発する超圧縮プラズマは周囲を焼き尽くしてしまう。地上から追う事も、空中から追う事もできない手詰まりの状態。
「……そうだ!」
まだ考えていない経路、それは地下。その事に気が付いたアカリはその場にしゃがみこむと、拳を地面に突き立てる。強く押し込みながら、腕のプロテクターを高速回転させる。ドリルのようにうまく地中にめり込んで行く腕。その勢いを活かして、どんどん地面を掘り進んでいく。全身が泥まみれになるのも意に介さず地中を突き進み、アバドーンの反応がある方へと向かっていく。
「見つけた!」
反応のちょうど真下から飛び込んでいくと、地上は人影のない荒地だった。
「ひいっ!?」
突然隆起した大地、そこから飛び出すアカリに腰を抜かすアバドーン。『鉄血の逆十字』を単独で壊滅させた怪物とは思えない情けない声。だが、ここまでアカリを苦戦させた事実が、それすらも恐ろしいものに感じさせる。
アバドーンは、取り込むための機械を必死で探す。
「でも、こんなところまで逃げたら取り込むような機械なんてもうないんじゃない?[コードBC:ボルテックチェイン]!」
そう、逃げる事に必死になるあまり、取り込むための機械もなく、人質と肉の壁を兼ねた市民たちもいない荒れ地に辿り着いてしまったのだった。電撃の鎖が、今度は標的を逃さずに縛り上げる。
「アバドーン!観念して操られた人たちを元に戻す方法を教えなさい!」
「む……無駄だよ、あの寄生虫は儂の脳波と連動しておる!儂が生きとる限りヤツらは操り人形のままだ。それに脳波の届く状態で切除しようとすれば脳味噌が引きずり出されて宿主もろとも死ぬだろうな!それでも時空警察は儂を殺せはしまい!なぜなら」
勝ち誇ったような素振りを見せるアバドーン。確かに、時空警察では基本的に犯人は生きたまま逮捕しなければならない。だが、
「時空警察の超法規的措置……『“対象が多次元指名手配犯であり”、“市民の安全を脅かす行為を行った罪で”、“現行犯逮捕する”場合のみ、犯人逮捕に際して生死を問わない』!」
「な、何っ!?嫌だ!儂は、儂は!」
勝利の確信が崩れ去り、狼狽するアバドーン。
「あなたは、そうやって命乞いをした人たちを助けてあげたの?17時24分、時空警察特別捜査官アカリ・アカツキ、強制逮捕を執行します!」
アカリは喚き散らすアバドーンを意に介さず、犯人『逮捕』のボイスログを残す。
「[コードSK:スパークル・カリバー]っ!」
虚空から長剣が現れ、大地に真っ直ぐ突き刺さる。アカリはそれを手に取ると、片足を引き、腰を落として両手で剣を構える。
「HEMトルネード!はぁっ!」
シュゥゥゥゥン!
剣先から放たれた超電磁竜巻が、アバドーンを空中に縛り付ける。
「ぐ、ぐおっ!?は、放せ!」
空中に磔となったアバドーンは、なおももがき続ける。
「超電磁……」
スパークル・カリバーを振り上げながらアバドーンの真正面に飛び込み、そして。
「一文字斬りっ!」
ズシャァァァッ!
そのまままっすぐに振り抜く。
「ああ……腹が……減った……」
真っ二つに切り裂かれたアバドーンは、最後まで満たされる事なく、激しい火柱を上げながら爆発する。
――――――――――
アバドーンの脳波が停止した事で、市民に植え付けられていた寄生虫は洗脳機能を失った。それにより宿主との結合も緩くなり、ほどなくして時空警察の手によって安全に切除された。ただ、アバドーンシティの市民は、ほとんどが盗品や非合法な物品を扱う闇市に関与しており、脅されていたとはいえアバドーンファミリーに協力してた者も少なくなかった。そのため時空拘置所・時空刑務所に収監する必要が生じたが、対象者は都市一つほぼ丸ごと。そんなものを余さず収容できる施設は、現状存在しない。
それに対して時空警察の取った方法。それは、アバドーンシティ全体を柵で囲い、そのすべてを巨大な刑務所に改造するというものだった。
――――なんて事があったの。
「そっか、そうしなきゃ解決しない時もあるんだね……」
向こうのわたしだって、できればとどめは刺したくなかったよね、きっと……
「うん。あなたみたいに浄化魔法が使えたらなぁ。そしたら街の人たちを元に戻して、アバドーンも改心させられたかも」
「ううん、わたしの浄化魔法ももしかしたら効かないかも。虫さんなんだよね、操るのに使われてたのは?それだと邪悪な心があるわけじゃないし、闇の力でもないから……」
「そっか、魔法だからって何でもできる訳じゃないんだね」
「わたしこそ。そっちのわたしならすっごく強いから、何でもできるって勝手に思ってたかも。」
「あはは、そんなことないよ。でも、何にもできない訳じゃない」
「うん。力を合わせてがんばろっ!二人ならきっと……」
「「大大大丈夫!」」
――――――――――
「……あれ?アカリ・アカツキ?もしかしてわたしと苗字違うの?」
「えっ?私の名前は“暁”あかりだけど……あなたは?」
「わたしは“明音”あかりなんだ。これからもよろしくね、暁さん。あれ?ちょっとよそよそしくなっちゃった」
「ふふっ、今まで通りでいいんじゃない?」
「そうだね。よろしくね、『わたし』!」
「これからもよろしく、『私』!」
極限突破魔法少女!インフィニティ∞アカリ まっどねすわんこ @madnesswanko
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