極限突破魔法少女！インフィニティ∞アカリ

第5話『降臨！漆黒の不死鳥』

「さぁ、終演（フィナーレ）です！」

　シュヴァルヴェルトがバラまいたガードビットは、また光線の弾幕を展開し……なかった？

　ビットはわたしに攻撃するそぶりは見せず、シュヴァルヴェルトの身体にどんどんまとわりついていった。ほどけるようにバラバラになって絡み合っていくビットは、鉤爪になり、翼になり、嘴になる。

　そこに立っていたのは、巨大な黒い鳥。

「これがワタクシの切り札……漆黒の不死鳥（シャッテン・フェーニクス）……！」

　こうなってしまうと［海王神の三叉鉾］（トライデント・オブ・ポセイドン）で渦を起こしても効果は薄そう。

　わたしは、［きらめきの矢］（トゥインクル・アロー）を引き絞り［天王神の雷霆］（ケラウノス・オブ・ゼウス）と［流星の撃滅者］（スターダスト・デバスタイター）の力を乗せて放った。

「無駄ですよォ……！ワタクシの構成パーツとして対電撃（アンチエレキ）ビットが組み込まれていまス……！一体化して出力が大幅に上昇した今、防御能力は通常の数十倍以上ゥ！」

　ほんとだ、あんまり効いてないみたい……でも、もう一発撃てば！

　そう思って、再び［きらめきの矢］（トゥインクル・アロー）を撃ち込む。今度は、対電撃（アンチエレキ）ビットも耐えられなかったみたいで、黒こげになって煙を出しながらこぼれ落ちてきた。

「損壊したとしてもその部位を切り離して他のビットを充填すれば、幾らでも回復できル！ヒャハハァ！ワタクシは……もはや不死身ィ……！」

　シュヴァルヴェルトは空高く舞い上がりながら、光線で森を焼き払いはじめる。

「やめて！……って言っても、聞いてくれるわけないよね。だったら！」

　わたしは［不死鳥の双翼］（フェニックス・デュアルウイング）でその後を追う。

「追いついてきたところで無駄ァ！決定打を持たない有機物にナぁにができまスかぁ？」

　確かにその通りだった。でも、だからといって何もしない訳にはいかない。光線の弾幕を張られたわたしは、防戦一方になっていた。［不死鳥の双翼］（フェニックス・デュアルウイング）がある程度防いでくれるけど、それでも攻撃に転じるチャンスを見つける事ができない。

「トドメでス！これで握り潰シテ……グギャアアアア！」

　次の瞬間、わたしを握り潰そうとした鉤爪は、炎の翼で焼かれていた。あれ……？そっか、これなら！

　態勢を整え、［海王神の三叉鉾］（トライデント・オブ・ポセイドン）を構える。このまま背後に回れれば……！わたしは遥か高くへと飛び上がる。

「どこへ行こうと言うのですカ？ワタクシから逃れられるとでモ？」

　よし、乗ってくれた！シュヴァルヴェルトは狙い通りに後を追ってきてくれた。

「さぁ、捕まえましたヨ！よクモ逃げ回ってくれまシたネェ……何ッ！」

　追いつかれるギリギリで身をかわして、背後に回り込んだ。そして、

「そこっ！」

　シュヴァルヴェルトの背中を［海王神の三叉鉾］（トライデント・オブ・ポセイドン）が貫く。

「有機物ドモはこれを『カに刺された程度』と呼ぶそうでスねぇ」

　シュヴァルヴェルトは、お腹まで槍に貫かれているのも意に介さず笑っていた。シュヴァルヴェルトの首がぐるっと回転して、真後ろのわたしの方を向く。たしかにこれだけじゃぜんぜん効いてないみたい。

「これでもそう言ってられるの？」

　槍から［天王神の雷霆］（ケラウノス・オブ・ゼウス）の電撃を流し込む。

「アギッ……！ガアアアアアア！」

［海王神の三叉鉾］（トライデント・オブ・ポセイドン）は常に水流を纏ってる。だから、それに貫かれて水浸しの状態なら、対電撃（アンチエレキ）ビットを無視して電撃を通せる。耐えきれなかったのか、シュヴァルヴェルトは火花を上げながら狙い通り地面に墜落していった。

［不死鳥の双翼］（フェニックス・デュアルウィング）の炎は、敵意の篭った攻撃、つまり『心』を持つ相手の攻撃しか防げない。だから、それで攻撃を防げたってことは……

「無駄無駄ァ！全てのビットを取り込んだワタクシは不死身ィ！もはや通用しナイ！」

　シュヴァルヴェルトは身体を軋ませながらも、ビットを組み替えてまた再生しようとしてるみたい。

　……えっ……？いま『全てのビット』って言ったの……？もしかして大大大チャンス？

「畏れを為しても遅イですよォ……手遅レ……！ワタクシ自身、もウ抑エきれまセンからねェ……制御不能ゥ！」

「わたしの弱点はたくさんの敵に対処しきれない事だって自分で言ってたのに、その戦術を捨てちゃうなんて……」

「もはや無関係ィ！この力さえ、最強のワタクシあレバ不愉快な有機物（アナタ）をブチ殺せル！もハヤ小細工は不要！」

「不愉快……か、やっぱり。あなたはただの機械じゃないんだね。」

　何も宿さない、純粋な［きらめきの矢］（トゥインクル・アロー）を引き絞る。

「あなたには……」

「ヒャハァ！浄化魔法ゥ？無駄ァ！そんなもの我々（マシン）には効カなイィ！ヤハリ有機物は愚劣愚鈍愚蒙ゥ！」

　――シュヴァルヴェルトの鉤爪が届くよりも前に、［きらめきの矢］（トゥインクル・アロー）がその身を貫く――

「『心』がある、そうだよね？」

　――シュヴァルヴェルトの電子頭脳にエラーが生じるとともに、ガードビットで構成された全身が崩れ落ち、本来の騎士型のボディだけが大地に崩れ落ちる。

　シュヴァルヴェルトは、倒れてなお自身の持つ邪悪な心（プログラム）がデータベースから消去されてゆくのに抵抗していた――

「騎械皇帝……万歳……！」

　――からくり仕掛けの騎士は、胸の機関部に己の愛剣を突き刺しながら忠誠の言葉を叫び、そして沈黙した――

「皇帝……か。まだこの人の上に王様がいるんだね。でも……」

　あの怪物はまた雰囲気が違った。『心』を持たない兵士とはいってもガードビットみたいな空っぽの器って感じじゃなくて、もっと深い、夜の闇みたいな感じの……

　騎械皇帝、それから謎の怪物。まだまだ戦いの終わりが見えない事を確かめながら、いったん村に戻ることにした。やっぱり、敵の居場所をこっちから探さないと……

「……あれ？」

　なんだろう、今だれかに見られてたような……