第4話 『決戦!魔法少女vs邪鳳将軍』
「これが魔法世界の空気……湿っぽくて鬱陶しいですねぇ、それに……」
――テップたちが『ナイアルランド』と呼ぶ地の森林に、細身の甲冑のような影が降り立った。邪鳳将軍シュヴァルヴェルト、彼は異形の軍勢をけしかけたが、魔法少女アカリにあえなく撃退された。その汚名を濯ぐため、直々に現れたのだった――
「なんですか、この不愉快な有機物どもは?これがショクブツとやらでしょうか?よし、どのみちいずれ我々好みに『改造』するのです。今やってしまいましょう」
――シュヴァルヴェルトがマントを翻すと、中からは無機質な光沢を放つ球体が大量に溢れ出す。その球体が目玉のような部位から光線を放つと、辺りは一瞬で火の海に包まれた――
――――――――
わたしは、朝ごはんを食べながら悩んでいた事をテップに打ち明けた。
「わたし、この村を離れようと思うんだ」
「どうしてだい?」
「こないだの敵、わたしを狙ってた気がするんだ。だから……」
「それでどこに行くんだい?敵のアジトを探すならともかく、アテもなく飛び出してもしょうがないと思うな」
「……うん、そうだね。逃げるだけじゃ始まらないもん、大大大丈夫!みんなの事は絶対傷つけさせないから!」
「きゃーっ!ひ、火が……」
な、なに!?村の人の声だよね?
「ひ、東の森が火事だーっ!」
もしかして……森が襲われてる?そうじゃないとしても、逃げ遅れた人がいるかもしれないよね。
わたしは変身すると、
森に駆けつけると、そこには騎士みたいな格好の人が立っていた。
「やれやれ、ようやく見つけましたよ。それにしても思ったより燃えにくいんですねぇ」
「あなたがこの森を燃やしたの!?」
「モリ……?ああ、このショクブツの群生地の事ですか。その通りですよ」
わたしは、即座に
「おっと、ワタクシめは邪鳳将軍シュヴァルヴェルトと申します。せっかくですから、殺処分する前にアナタの個体名を聞いておきましょう」
「わたしはアカリ、魔法少女アカリ!」
シュヴァルヴェルトはマントを翻しつつその場から消えてしまい、放った
それと同時に、野球のボールくらいの丸い物が、何十個も飛び出してきた。
「群体への対応策に欠けるのがアナタの弱点だというのは研究済みです!ガードビットども、やっておしまいなさい!」
ガードビットって呼ばれてたモノ、ただのボールじゃなくって目玉みたいな……ううん、あれはカメラだと思う。てことはアレは機械なのかな。そうだとすると、
こないだの怪物は、心こそ持ってなかったけど邪悪なエネルギーの塊みたいな存在だったから浄化できた、でも……
「ピガガッ!」
ガードビットたちは、その目玉みたいな部分から光線を出してきた。一本一本ならどうってことないと思うけど、弾幕を張られてしまうとどうしても避けきれない。
いつもの通りに
「ダメかもしれない……でも!
大量に出した泡で、光線が遮られていく。あまり強力な魔法じゃないからひとつひとつの泡はすぐ割れてしまうけども、それが逆にエネルギーを発散してくれてるみたい。
ある程度距離をとって、強化した
「ハァッハッハッ!かかりましたねぇ……!」
稲光が消えた後、そこにはまだガードビットたちが健在だった。
「嘘っ……!?どうして!?」
「アナタの攻撃がそのワンパターン戦法になる事は読めていました、ですから用意しておいたんですよぉ……
ふた回りほど大きなガードビットが、真っ黒になりながら崩れていった。
「もっとも、一撃しか耐えられないのは想定外でしたが……」
いちどペースを崩されてしまうと、
機械と戦った事なんてないから弱点なんて……ん?機械……?そっか!
「機械だったら、水には弱いよね!
わたしの手元に現れたのは、水の力を宿した槍。振り回すだけでも水流が敵を呑み込む。だから、それを回転させれば……!
――頭上で三叉鉾をバトンのように回転させるアカリ。それにより、振り撒かれた水流は弧を描き、円を描き、そして渦となり、ガードビットたちを呑み込んでいった――
「ふむ、まだそんな隠し球があったのですね……」
「これでもう残ってるのはあなただけだよ、シュヴァルヴェルト!」
「望むところです。ワタクシの剣技、魅せてさしあげましょう!」
シュヴァルヴェルトの振りかぶった剣を
「あなたたちは他の世界から来たんだよね!?どうしてこの世界を襲おうとするの!」
シュヴァルヴェルトの剣を弾き返すと、今度はわたしの槍が受け止められる。
「簡単な話ですよ!下等な有機物どもに大地の支配者は相応しくない、それだけの話です!」
「支配者っ……!?そんなのじゃない!この世界は誰のものでもない!みんな共に暮らしてるだけなんだから!」
そして、剣に跳ねのけられる。でも、
「共生関係ですと?なんとも素晴らしい表現ですねぇ!」
弾かれた勢いを活かして後ろに下がり、今度は左手に
「食糧、建材、害獣……アナタたちは様々な理由をつけて、より下等な有機物を支配下に置いている。ワタクシたちも、より下等な存在を支配下に置こうとしているだけ、そこになんの違いがあると?」
「違う!」
「たしかに傷つけてあってしまう事もある、でも……!」
「傷つけるために傷つけて、壊すために壊す……そんなの、ぜんぜん違う!」
すんでのところで弾かれてしまい、その槍でシュヴァルヴェルトを貫くとはいかなかった。でも、まだ気づいてないみたい。
回転しながら戻ってきた大鎌の刃がシュヴァルヴェルトの背後から突き刺さり、弾けるように火花が散った。
「ハハハッ!随分とご都合がよろしいことで!『わたしの支配は良い支配、あなたの支配は悪い支配』とは、さぞお幸せでしょうな!」
大鎌に貫かれてもまだ、シュヴァルヴェルトは一瞬よろめいただけでまだ立ち上がれるみたい。今はちょっと押しているけど、相手は不死身のマシン。このままじゃわたしがどんどん疲弊してくだけでらちがあかない。何か、次の一手を……
でも、状況を打開したいのはわたしだけじゃなかったみたい。
「随分と不要な手間をかけさせてくれましたね……ですがそれもこれまで!」
シュヴァルヴェルトはまたマントを翻すと、たくさんのガードビットを出した。
「まだ……残ってたの……!」
「さぁ、
――――――――――
「シュヴァルヴェルトの反応を追って来てみたけど、まさかヤツに立ち向かえる者がこの世界にいるなんて……」
――魔法少女と邪鳳将軍の戦いを陰から眺めていた者、それは――
「あの子はいったい……?」
――あかりと瓜二つの少女だった――
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