第3話 『強襲!異次元の侵略者』
「ありがとう、あかり。キミが来てくれて本当に助かったよ」
「ううん、困った事があったらいつでも呼んでね。できればおなか空いてないときに」
魔王を倒したわたしは、いったん元の世界に帰ることにした。少ししたら魔法の修行のためにまた戻ってくるつもりだけど。
「じゃあ、帰るためのゲートを開くね……あれ?」
「テップ、どうしたの?」
「ゲートが開かないんだ、魔王は倒したからもう大丈夫なはずなのに……」
うーん、疲れて魔力不足って訳でもないよねぇ。どうしちゃったんだろ?
「なんだろう、あれ……雲?」
「違う、あれは……!」
――黒い雲のように見えたのは、空を飛ぶ怪物の大群だった。一見ヒトのようでヒトならざる姿。巨大な蝙蝠のような翼、長く垂れ下がった尻尾。『悪魔』と形容するのがふさわしいような禍々しい姿をしていた――
「あかり、すごく邪悪な力を感じるよ!たぶんゲートを開けないのはあいつらのせいだ!」
「だよね、わたしに任せて!目覚めて!わたしの中の、無限の力!」
極限光輝の魔法少女神 インフィニティ∞あかり
Lv:3579
HP:25695748/25695748
MP:6294821/6294821
魔法威力:758643
魔法防御:540875
スキル:
[
[
etc…
わたしは、
この炎の翼は、敵意を感じ取って、たいていの攻撃は焼き尽くして防いでくれる。だからこれで突っ込むだけでも……
「ッ!?」
わたしのほっぺに、焼けるような痛みが走った。酸?でも、防げないはずの攻撃じゃなかったはず……
わたしが違和感の正体に気付いたのは、怪物の顔に目を向けた時だった。
そこにあるはずの顔はなく、マネキンみたいにのっぺらぼうだった。わたしを囲む動きからも、何の感情も伝わってこない。
「もしかしてこの怪物たち……『心』がない……?」
炎の翼が感じ取れるのは、敵意のある攻撃だけ。つまり、意思がない相手には通用しない。
「だったら!」
全速力で上空へ飛んでから、
わたしを囲むために一箇所に集まっていた怪物たちは、雷の柱に飲まれていった。だが、それでもまだ怪物の群れのうちほんの一握りしか倒す事はできなかった。
「あかり!このままじゃキリがないよ!」
「わかってる、でも……」
――大丈夫だとは決して言えない状況。幸い、上空に派手に飛び込んでいったあかりに注意が向いているため、村や人々が襲われる事はなかった。
広域攻撃があまり得意でないアカリにとって、意思を持たない大群は天敵というほかないだろう――
さっきみたいにおびき寄せて……でももう警戒されてる、同じ手は使えない……?
でも、わたしから離れようとしてるならちょうどいいかも。
「
空中に浮かべた光の球体にあえて何のスキルも付与していない
また怪物の群れを削る事はできても、全部倒しきるという訳にはいかない。怪物は感情を持たない人形のような存在らしく、
今みたいな攻撃を警戒してるのか、怪物たちはまたわたしに向かってくる。あれ?もしかしてまた引き寄せて、全部のせ
近くに詰め寄られて、とっさに
生きとし生けるすべての者の命を奪う破滅の鎌。
背筋に寒気が走る。なんだかわからないけど、すぐにここから離れないといけない気がする……!
距離を取ってから、その嫌な予感が当たっていたのを確認する。怪物たちは、切断面から血のような液体――たぶん、わたしに浴びせたのと同じ酸――を吹き出しながら、まだうごめいている。
ある者は切り落とされた下半身を抱えながら、またある者は頭を切断されたまま、一箇所に集まろうとしていた。
これまで全力で焼き尽くしてたからわからなかったけど、たぶんこの怪物には『命』そのものがないんだと思う。ひとつに集まって何をする気かわからないけど、あそこに留まってたら酸をまともに浴びせられたのは間違いない。
一箇所に集まった怪物は、それぞれが混ざり合ってゴムのように黒光りする球体になっていった。まだやられてない怪物もそこに集まってどんどん巨大になっていく姿を見るに、これが最後の切り札に違いない。
球体は、継ぎ目から酸を吹き出しながら地表へと向かっていった。
「ダメ!この下には!」
テップたちの村がある。あんな大きなものが落ちてきたら、たとえ直接ぶつからなくてもひとたまりもないかもしれない。それに、酸のたっぷり詰まった袋みたいになってるはず。そんなものを落とす訳にはいかない。
ひとかたまりになってくれたのは、ある意味好都合でもあった。それなら、いつもの戦い方が通用する。
射撃スキルの威力と範囲を大幅に強化する
チャンスは一瞬。村を射線に巻き込まないように、球体が落ちてくるよりも前に、撃ち抜かなければいけない。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
まばゆい閃光が球体を包み込んだ。
次の瞬間、あたり一面に広がっていたのは晴れやかな空。
「大丈夫だった、テップ?」
地上に降りて変身を解いたわたしは、みんなの安否を確認することにした。
「“大大大丈夫”だよ、なんてね」
「よかった、今回はちょっとやばかったかも……村の人たちは?」
「みんなも無事だよ。それで、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「うん、いいよ。いまの怪物みたいなのがまた来るかもしれないからみんなを守ってほしいって事だよね?」
「ありがとう。ボクに手伝える事だったらなんだってするよ!」
ぐぅぅぅぅぅぅ……
「あはは……」
「ふふっ、どうやらまずはご飯の用意が食いしん坊さんへのいちばんの手助けみたいだね」
「たまたまだから!くいしんぼじゃないって!」
「改めてよろしく、あかり」
「こちらこそ改めてよろしくね、テップ」
――――――――――
「多勢に無勢、などと言っておったな」
「も……申し訳ございません。所詮借り物の兵団ではあの程度。ですがらもう一度チャンスを頂ければ、必ずや『アレ』を使って……」
「相手を見くびっていては命取りだという事が分かったようだな」
「はい。今度こそ、ワタクシめ自身の手でヤツを仕留めてみせます」
「お前はツメは甘いが、可愛い部下だった。いいだろう。ここで死ぬようならその程度だという事だ、全ての力を見せてみろ」
「はっ!陛下の仰せのままに!この邪鳳将軍シュヴァルヴェルト、この身に代えても勝利を手に入れてみせます!」
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