第30話 火竜接触

 橋にさしかかり川へ飛び込む。水深は1mにも満たない小さい川だがそこをかまわず進む。

 そこへ林の中から黒いパワードスーツが4機飛び出してきた。識別はオレンジ。アンノウンだが47ミリ弾を連射してやった。そいつらは金属片と血をまき散らしてバラバラになる。

 DDDが3機、右手の山間からジャンプして川を越えようとしているところへ対戦車誘導弾をお見舞いする。当たらなくていい。牽制できれば。右手の山間に47ミリ弾をばら撒きながら川を走る。正面に誘導弾を回避したDDDが着地した。目の前にいたのはAAL系のDDDで火竜と呼ばれる赤い機体だった。至近距離だが120ミリをお見舞いした。そいつはコクピット部分に大穴が空き沈黙した。

 黒いパワードスーツが何機か川を越えて病院側へ走っていく。47ミリ弾で掃射するも命中したのは2機。火竜が2機こちらへ向かってくる。もう1機の火竜は俺を無視して病院側へ向かう。そして、ハドロンらしき銀色の機体も病院へ向かった。

「こちらクロ01まるひと、火竜1機撃破、パワードスーツ6機撃破。火竜1機とアンノウンDDD1機、残りのパワードスーツは病院へ向かった。尚、こちらは火竜2機と交戦中」

「了解。キャンプ周辺に防御線を張ります。非戦闘員は病院内へ退避させました」

 ニコル中尉が返事をする。

「それでいい。トリプルDはクロ02まるふたに任せろ。パワードスーツに全力で当たれ」

「了解」

「クロ02まるふた、聞いているか?先に火竜を仕留めろ。赤い方だ。銀色はハドロンの可能性が高い。注意しろ」

「はーい。任しといて」

 玲香もスタンバっている。

 俺は47ミリ弾をばら撒きながら火竜をけん制する。遠い方の火竜は赤と銀のツートンカラー。手前にいる方が赤一色だった。遠い方が格上のようだ。俺はツートンの方に対戦車誘導弾を放ち格下に120ミリを撃ち込む。格下は120ミリ弾をかわしレーザーソードを抜いて斬りかかって来た。俺は弾の無くなった47ミリと120ミリを投棄しシールドと実剣を装着する。正に接触する瞬間右肩の76.2ミリをぶちかます。手前の火竜は頭部を吹き飛ばされ倒れたが、左から回り込んできたツートンの攻射撃を受け数発被弾してしまう。左肩に装備したランチャーを投棄し回り込んできたツートンに向かおうとするのだが左脚が動かない。可動部に被弾したようだ。

「クロ01まるひと被弾。損害は軽佻だが脚部を損傷した」

「クロ02まるふた了解。助けに行けないよ」

「分かってる。こっちで何とかする」

 ツートンの射撃をシールドで防ぎつつチャンスをうかがう。その時、頭を吹き飛ばした格下が起き上がり俺の機体を後ろから羽交い絞めにしてきた。ツートンはレーザーソードを抜きオレのコクピットをめがけて突きを入れてくる。

 絶体絶命。いや違う。機動攻撃軍のトリプルDはこんなものじゃない。

 ツートンのレーザーソードをシールドで受け、俺の機体にしがみついている火竜の右腕を引きちぎった。シールドは真っ二つになったが実剣でツートンのコクピットを突く。かわされた。しかし、振り向いて頭部と右腕を失った格下に斬りつける。奴の胴体は真っ二つになり腰から上が川に落ちた。

 ツートンは更にレーザーソードを構え突っ込んでくる。俺はシールドを投棄し47ミリ拳銃を抜く。5発撃ったが火竜の装甲は抜けない。その時ツバキが嫌な報告をして来た。

「VTOL輸送機が接近中です。ガンシップと思われます。計5機、接触まで2分。小松基地からのスクランブル機は2機発進準備中、到着まで約7分。舞鶴沖の空母「しらさぎ」より攻撃機6機発艦準備中。到着まで約10分」

 航空支援は間に合わない可能性が高い。

 斬りかかって来るツートンに向かって脚部のバーニアを吹かす。

 盛大に水しぶきが上がって視界を塞ぐのだが構わずヤツを突く。

 

 偶然?

 いや狙っていた。実剣は奴のコクピットを貫いていた。ツートンの火竜は水しぶきを上げながら倒れた。


「こちら、クロ01まるひと、火竜2機撃破するも脚部損傷の為合流には時間を要す」

「クロ02まるふた了解。こちら火竜1機撃破。きゃ」

「どうしたクロ02まるふた

「対峙しているDDDはハドロンではありません。この野郎、生意気なんだよ」

 ハドロンではない。外観は酷似していたが、別物だというのか。

「クロ02まるふた、実剣が2本折られました。推定出力レプトンの1.8倍。強力なビーム砲を装備しています。左腕が実剣と共に溶解しました」

「何とかしのげ。直ぐに行く」


 玲香の乗ったレプトンを圧倒する高性能DDDとは何だ。

 嫌な予感しかしない。

「ツバキ。病院まで飛べるか」

「可能ですが、推進剤を全て使用します」

 つまりそこまで飛べば俺は動けなくなる。しかし、他の選択肢はない。

「ツバキ、飛ぶぞ」

「了解しました」


 背中と両脚のバーニアが噴射する。

 俺は空高く飛び上がった。 


 その時、遠方に接近してくる輸送機を見つけた。

「ツバキ、撃てるか?」

「空中での射撃では弾道が安定しません。非推奨です」

 まあそんなもんだ。


 前方に銀色のDDDとクロ02まるふたが戦闘しているのが見えた。玲香は片腕で実剣を振りよくしのいでいる。

「距離1350。アンノウンにロックオンしました」

 玲香が打ち込める隙を作るため76.2ミリを撃ち込む。アンノウンの足元に着弾した。当然奴はこちらに注意が向く。

 その隙を見逃さず玲香は実剣で打ち込む。しかし、片腕で払われた。着地した俺に向かってビーム砲を放つが右肩の火砲に命中し爆発した。

 俺は尻餅をつき、玲香も片膝をついている。左脚が動かない機体と左腕を失っている機体。数は2対1になったがこちら側の不利には変わりがない。

 更にまずいことに到着したVTOL輸送機が低速で旋回を始めた。俺達を中心に反時計回りに旋回する。左側の腹が開き、火砲が顔を出す。


 絶体絶命とはこの事だ。

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