第29話 漆黒のDDD
「斉藤大尉、お迎えに上がりました」
「ご苦労」
お互いに敬礼をする。ここでは玲香もきちんと敬礼していた。
「早速キャンプ地にご案内します。ここから2500m程の地点になります」
「そんなに近くて大丈夫なのか?」
「電磁波シールドを展開しています。光学、電波、赤外線からは完全に遮断します」
「よくそんな装備が調達できたな」
「ええ、装備は調達出来ましたが、残念ながら人員は……」
「新兵ばかりなんだよね」
「そうです。遠山上等兵、言葉遣いには気を付けなさい」
と言いながら俺を睨むニコル中尉である。教育が悪いと言いたいのだろう。米国人だが肌は褐色で黒髪だ。鋭い目つきは歴戦の勇者を思わせる。グラマスな体形で華奢な玲香とは対照的だ。
「気を付けろ」
俺の一言に「はーい」と気のない返事をする。
外には若い白人兵士が二人待機していた。
二人はジャクソン曹長とウッドハウス上等兵と名乗った。
若い兵士の運転でキャンプに到着する。見えないカーテンをくぐりキャンプ内に入った。バリオンより細身のレプトンが既に2機配置されていた。胸のコクピットは開き整備員が乗り込んで調整作業中だ。2機とも真っ黒に塗装されている。左肩に機動攻撃軍のマーキング。鷹を象ったもの施してある。右肩には機体番号001と002がつけられている。001が俺、002が玲香だろう。
「ねえ大尉どの。コードネームはどうしますか?」
「ああ、そうだな。黒い機体なんでクロ
「それ嫌だな~。もう少し恰好のいいのにしましょうよ。例えば、ポジトロンとエレクトロンとか?」
「それだとくっついたら対消滅するぞ。余計な事は考えなくていい。もう決定だ」
「つまんないの」
「関係ない。いい加減に興味本位で任務に口を出すな。この馬鹿者」
「また馬鹿って言った」
そこへ整備班の隊員がやってきた。敬礼する。
「自分は高原曹長であります。装備に関しての報告であります。01の方に76ミリ速射砲を右肩に、120ミリ対戦車誘導弾4発を左肩に装着しております。120ミリ
「うはー実剣4本だってさ、萌えるう~。これは思いっきりやれって事だね。実剣はよく切れるけど折れちゃうからね。えへへへへ」
確かに、トリプルDの実剣はレーザーソードよりも切れる。理由は正確にはわかっていないのだが、霊的な能力を剣に込めることができるのではないかと考えられている。
俺達はそれぞれの機体に乗り込み調整を始めた。その時ニコル中尉から通信が入る。
「斉藤大尉。敵に動きがみられます。トリプルDと思われる機体が5機、パワードスーツが15機、大部隊です。例の工事現場からこちらへ直行しています。およそ10分で接触します」
「分かった。俺が出て牽制する。航空支援を要請しろ。それと、バリオンを中隊規模で要請」
「了解。病院の避難は?」
「時間が無い。外へ出るとかえって危険だ。パワードスーツ部隊は病院を死守しろ」
「了解しました」
「曹長、起動しろ」
「了解」
リアクターが起動し機体に火が灯る。AIが立ち上がり挨拶をする。
「私はレプトンA0198搭載AIの……」
「お前は今からツバキだ。即登録しろ」
「了解しました。私は只今よりツバキです。戦術データリンク展開しました。目標確認」
正面のパネルに地図と敵の陣営が表示される。刻々とここへ近づいて来ている。
「クロ
「私が後詰ですか?」
「エースは最後に控えておくものだ。分かったか」
「わっかりましたぁ~」
そう言って実剣を二本抜き、それをブンブンと振り回す。
こちらの予想を上回る大部隊だ。これに、ガンシップが加われば勝ち目はない。攻撃は夜間を想定していたが、敵はこちらの準備が整う前に奇襲に踏み切った。トリプルDは2対5、圧倒的に不利。内部に敵の協力者がいるのは間違いないだろう。
俺は道路上でレプトンを走らせる。ここで速度と距離を稼ぎ敵の側面を叩くつもりだ。路面のアスファルトが剥がれていくがそんな事には構っていられない。
「接触まで約3分」
AIのツバキがカウントを始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます