第20話 核装備型ランス

 俺はもう一度レクチャ―を受けた。


 大型小惑星破砕用核装備型ランス。

 全長は1.5倍、180mになった。質量は2.5倍で全重量は37500t。あのキチガイじみた核融合ブースターを二段にして秒速900㎞を出す。キチガイの向こうは何と言うんだろう。さらにキチガイに拍車をかたのが、このランスには劣化ウラン弾芯が仕込まれているのだという。概ね350tの巨大なウラン弾芯と、それに3F爆弾(水爆)を付随させる。小惑星に1000m食い込んだところで起爆させ、核反応の予定の出力は約75メガトンだという。こんな途方もない数値は何度聞いても腑に落ちない。

 キチガイを通り越して何週も回っているかのような不可解さを感じるが、これが、あの巨大小惑星を最短で破壊する策なのだ。とにかく俺が突っ込む。上手くいけば数個の破片に砕くことができる。その破片の多くは地球との衝突コースから外れるという。失敗すれば、例の穴掘り作戦を実施する。地球まで約1ヶ月の距離。穴掘り作戦は約3週間かかる。その期間を考えればなるべく遠い距離で破壊する方が得策なのだろう。


「秋山中尉。よろしいかな?」

「はい。問題ありません」

「ランスの操縦系は今までと同じでほとんどオートだ。ワープ後の最終弾道調整が君の仕事になる。加速時間が長いだけで他は通常の出撃と同じに設定してある」

 俺は頷く。

 俺に話しているのは技術士官の遠藤大尉だ。あの山本大佐の部下だという。

「山本大佐から聞いていると思うが、至近距離で核爆発の放射線と衝撃波を受けた場合、霊体にどう影響するのかは判明していない。これは前例がない」

「分かっています」

「通常と同じように無事に戻って来れると言う者、霊体にダメージを受け、最悪死に至ると言う者、両方いるのだ。霊体に関しては科学的な根拠や理論がまだまだ希薄だ。分かっていない事の方が多い。すまないがこの書類にサインをくれないか」

「これは?」

「今回、君が出撃した際の全データを研究用に提出し利用する為の承諾書だ」

「分りました」

 俺は書類にサインをする。

「人体実験だと批判する者が出るだろう。しかし、我々は、地球を救う為の最も効率的な方法を模索している最中なのだ。その過程で得られるすべてのデータを記録し後の為に活用しなくてはいけない」

「勿論承知しております」

「秋山君。ありがとう。君の勇気には敬服する。お世辞ではない。本心からだ」

「大佐からも同じことを言われましたよ。よく似てますね」

「そうかもしれない。自分は技術畑だが、地球を守りたいという熱意は負けていないと思っていた。しかし、君の勇気は自分たちの想像の上を行く。感謝するしかないんだ」

「ありがとうございます。明日は必ず成功させます」

「ああ、頼んだよ。人類の未来は君の双肩にかかっているんだ」

「大げさですね」

 俺は笑いながらミーティングルームを出る。向かうのは医務室の中の精神移植専用の手術室だ。

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