105 紫陽花の唄 あん様
Nさんはとても良い人だ。
厳しいことは言うけれど、みんなの幸せを願い、一生懸命仕事をする。
不満を人にまき散らしたりはせず、誰かを怒鳴りつけることはない。
とても良い人なんだけど、
たまに天然の刃を振りかざすのだ。
Nさんの何気ない一言を羅列しよう。
「遠藤さんうるさいです静かにしてください」
「そんなに無理はしないでいいですよ。もう年なんですから」
「悪い意味ではなくて、遠藤さんのいいところが見えなくなっていますね」
「わかりました遠藤さんの好みは年上でロリな人なんですね。遠藤さんの好みは年上ロリロリ(おもひでポロポロと同じイントネーション)ですか」
「遠藤さんは家族が出来たらいいお父さんになりそうですね。相手がいないですけど」
「遠藤さん、サイズがあってなくてセーターが可哀そうなことになっています」
そろそろ僕は泣いていいんじゃないのだろうか。
悪意がないからといって、傷がつかないわけではないのである。
遠藤です。
紫陽花の唄 あん様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897661513
愛想がよく男好きのする彼女は、まるで紫陽花のようだと言われている。
賞賛ではなく、揶揄として。
移ろうように見える彼女の、本当のキモチ。
一言、切ない。
紫陽花の花言葉って、あまりいい言葉が最初にはこないんですよね。
花の色が移ろっていく様を、人の心が変化することにたとえて「移り気」とか「浮気」とかって花言葉があてがわれている。
また、紫陽花は旬を過ぎても土気色の枯れた花びらをつけ続けるという特徴から、未練がましさの象徴としての意味合いもある。
梅雨の季節に咲く、存在感に溢れた風物詩も、無情な花言葉や意味合いに彩られている。
個人的に紫陽花ってすごい好きだから、初めて花言葉を調べた時は案外ショックだった。
まあ花言葉はあくまで人が考えた後付けだと思うから、紫陽花自身の価値を落としたりはしないんだろうけど。
ともあれ、物語はそんな紫陽花のイメージがぴったりとギミックとして使われている。
男の誘いを断らずにほいほいついていくキヨは、紫陽花のような女だとして同性からは嫌われてしまう。
けれど、彼女は一途に本当に好きな人を思い続けているというのだ。
入り組んだギミックではないけれど、そのシンプルさと、一途さの結末が胸に来る。
意外性はない。少々過激だが必然性もある。
紫陽花の気持ちに気づいたときは、切ない。
約747万2千
Nさんよくばりセット
「遠藤さん。今日もパンツ見せてるとKちゃんが喜びますよ」
「Sくんが自分のことを妖精だって言っていました。ムーミン的なんですね」
「私の有休を勝手に使ったら、遠藤さんの有休が私のものになりますよ」
「今年はドラえもん休暇とクレヨンしんちゃん休暇と鬼滅休暇をとるのでよろしくお願いします」
年上の優しいお姉さんに罵倒されるのも、なんだか楽しくなってくるよね。
↑手遅れ。
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