98 セカンド・ニッポン 青澄様
カクヨムロイヤリティプロジェクトについて、今更説明を読みました。
まあよく読まれる作品に広告をつけて、宣伝された側に得があれば、そりゃ収益を還元もできるよね。
とはいえ、エッセイのタイトルを金だなんだと言っている割に、そもそもプロジェクトに参加してないし。
お金になる文章を書いている気はしないというのもあるけど。
それに、広告があったら微妙に読みづらいんじゃないだろうか。
あれ? エッセイタイトルとやっていることが噛み合ってないんじゃないだろうか?←今更
もうエッセイタイトルを変えようかと思っている今日この頃。
セカンド・ニッポン 青澄様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893818063
震災と世界を覆い尽くす混乱に瓦解した日本列島と、かつての本国の面影を残しながらもそれを越える大国へ成り上がった琉球連邦共和国。
墓標と化した街を歩く孤独な旅人、大陸で生まれ故郷を追われた少年、元陸軍兵士の連続殺人鬼。もう一つのニッポンの片隅に生きるはぐれ者の物語。
物語の紹介文より引用
びっくりするほどディストピア。
情景描写に関してはひじょーーーーに力を入れているなあと感じる。
SF特有の独特な雰囲気を滲ませようといった努力を感じさせて、いいんじゃないでしょうか。
震災って説明では書いているけれど、本当にそれだけで世界は荒廃していったのかまでは定かではない。
放りだされた船や避難所にいたであろう人たちのメッセージは悲壮感を漂わせている。
ひたすら壊滅した後の土地を散策する描写では、世界観を表現する意図には充分だと思う。
文明の残骸を放浪するケンヤとアオキ。
崩壊によって守る物を失ったアオキに、町の秘密に触れて断罪されざるを得なかったケンヤ。
でも意外に思ったことは、こんな擦り切れかけた世界観にも関わらず、なんだか優しい人々がまだいたこと。
歓待してくれる村長や、逃げ出した人物にも寛容な公職の人。
こんな感想を抱く自分がおかしいような気がするけど、ある意味その優しさを奇妙に感じる。
タグで管理されたり、遺伝子操作や人間の社会が高度な科学システム化された社会でも、人間らしさを追い求めるといったテーマが潜んでいるんだろうかね。
で、タイトルにもあるセカンド・ニッポンという物語が、エピソードタイトルになってから、雰囲気はがらりと変わる。
幸せな家庭や女性から命と金品を奪って生活する、名もなきシリアルキラーが主人公に躍り出る。
親の名前も顔も知らないで、純粋で冷血な軍人として育てられた過去を持つ。
人を殺すことに対して、彼には倫理や道徳といったストッパーは機能しない。
自分の手に入らない幸せな家庭に嫉妬して、壊したくなるといった感情はわからんでもない。
彼にとって愛情を示すことが殺人という表現であるというなら、わからんでもない。
でもどうやら、普通に人を愛したいといった願望はありそうだ。いや、普通ってなんだという話だけど。
自分のことが大好きだと案外肯定感があるようだけど、いっちょ前に劣等感もあって、ある意味人間らしいところは興味深い。
劣等感と言うのは微妙に違うなあ。自分はこれでいいけど、ああいうのもいいなあといったワガママな感情かな。
個人的に一番面白かったところは、奈々という綺麗で恵まれた女の子と恋人になって、彼女が壊れるところを観察するための実験したというエピソードかな。
どれだけ傷つければ心は折れるのかとか、逆に依存を引き起こすのかとか、実験的な思考。
傷つけて判断力を失くし、周囲は彼女にとって都合の悪い敵だと判断させることで、依存を強める。
これ……DV男の手口だ……。
認知的不協和だこれ。ひどい目にあっても、これに耐えている理由は何か? それは彼を愛しているからと、自分を納得させることでさらに愛情を深めるといった負の循環だこれ。
で、そんな彼女に対して、どうしてそんな状態でいいの? と問いかけを行う人物もいた。
そのことで、結局彼女の心境は変化するのだが。
これ……宗教にハマった人なんかを正気に戻す手口だ……。
信じ切っている状態の人に、「それは間違っている」といったとしても、聞き入れない。だってその人の認知はそれが正しいことだと固まっているから。
だからこそ、その人本人に考えさせる。
そして、一つでも信じ切っている相手に疑念を抱いた時、そのほころびから呪いは解けている。
だって、自分で間違っていることだって気づいたのだから。
そういった展開を平気で(かは知らないけど)書いてしまえるところは恐れ入る。
物語に対するこだわりを感じる。
冷徹で美麗な描写は物語の雰囲気にあっている。
それはとてもいいのだけど、奈々の崩壊と再認識のエピソードを描くなら、彼女の描写が欲しいなー。
断片的に語るというよりは、起きた反応をただただ描写している感じ。
そこの行動や想いや意図について触れると、もっと魅力的になるのかもしれない。
物語の書きだし方としては、起きていることに感情移入するというより、起きている物事を外から眺めるといった楽しみ方を意図しているように感じる。
だから書き方として間違っていないのだ。
あとは、詳細な描写が光るからこそ、読み辛い。
別に読みやすい物語が優れているとは思わないけど、物事を細かく、読み手側に誤解のないように伝えるために、詳細にならざるを得ないのだと思う。
ふんわりとした、あと淡々とした幅はあってもいいのかなーと思う。
一文一文が冗長になりがちなところは、惜しい気もする。
あっ、これ自分のエッセイやら小説やらにブーメランだ。痛い! 額にブーメラン刺さった!
いやこれはもう、このままいって欲しい。
冗長で描写が少しめんどくさくて、雰囲気にパラメータを大幅に振っている感じは、独特の魅力がある。
作者様も好き嫌いに差が出るといった表現をしていた気がするけど、それでいいと思う。
自分が書くとしたら、かなり時間がかかってしまい、書く側として手を出さないタイプの物語だと思うからこそ、その路線を全力で突き進んで欲しい。
約735万3千
ふくよかで人が好さそうだけど、クレバーに立ち回ったり物事を細かく分析するようなタイプではなさそうな新人が入ってきた。
いや、中途だから社会人経験があり、仕事の厳しさも知っているから、これからとても楽しみなのだ。
で、色々と雑談をしていたら。
「職場での服装はどんなものがいいですか?」
「ジーパンじゃなくてチノパンやスラックスの方が好ましいかな。常識の範囲内であれば構わないです。でも、どうしてそのことが気になるんですか?」
僕が聞くと、新人は申し訳なさそうに答える。
「いや僕……私服がめっちゃ派手なんです」
この一言で、俄然興味が湧いてきた。
意外性って本当に面白い。
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