72 唯我! 高岡ミヅキ様

 人はいつの時も、成長を求めている生き物だと思うのですよ。


 過去の自分に負けたくないと思いつつ、行動に移すかどうかはさておき、生き続けて死ぬまで、なんだかんだで最高の自分でいたいという願望があるような気がします。


 物事のアップデートは必要だと思う。過去に築き上げたものも、時代の変化速度に対応できずにおいて行かれたままで、すぐに時代遅れのものに成り果てる。


 もし過去の作品を今の自分がアップデートするとしたら、どんな物語になるか漠然と考えてみました。


 そしたら構想の段階で、SFがただのラブコメに成り果てました。


 あれえ?





 唯我! 高岡ミヅキ様


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886967975


 赤ん坊の頃に児童養護施設に引き取られ、親の顔を知らずに育った小山内唯我は、ある時アイドル事務所からスカウトされる。しかし、そのスカウトには経営難の問題を抱えていた施設の命運がかかっていた。


 アイドル活動を通じて、初めて出会う友、ライバル、熱狂。


 そして、憧れ続ける、恋の行方。


 男性アイドルとして成長を続ける、唯我の舞台が、幕を開ける。





 男性アイドル。しかもジャニーズを模した物語は、今まで読んだことはなかったので新鮮で面白みがありました。


 唯我は親に捨てられた過去を持ち、児童養護施設で育てられている時に、アイドルとしてスカウトをされました。


 演技のレッスンやダンスレッスン。年の近い男性アイドル達と協力し合い、時に競い合いながら、自らのスキルや地位を高めていきます。


 ただ単純にサクセスストーリーというだけでなく、児童養護施設での暮らしぶりは、家族ドラマとしての側面も見せます。


 親に捨てられたことで、唯我にはどこか陰のある魅力を感じます。カッターを持ち歩いている攻撃性や不安定性も、魅力ですが、アイドル活動を続けていくうちに、自分の理想とするアイドル像を探し求めたり、演技や自分の境遇についての葛藤も描かれます。


 ただ単に能力があって、その能力を磨いて敵を倒していく物語ではなく、その苦悩や事情を感じていくうちに、物語へと埋没していけるように感じました。





 自分より幼く、親に捨てられたり不幸な事故によって施設に預けられた子供たちにとっては、唯我は憧れのお兄ちゃん。


 施設を出て独り立ちをした駿兄や、親に虐待をされて育った男性恐怖症の佳代にとっては、可愛い弟。


 ジェニーズ事務所でレッスンを受けたりライブに奮闘する唯我は、発展途上のアイドル。


 そして、唯我が憧れる、9歳上の世話人の優里子にとっては、可愛い弟であり……。


 様々な人間関係模様が描かれており、唯我のいく様々な場所での関係、唯我の在り方は変わっていきます。


 振る舞いや立場の違いによって、唯我の様々な面が見られるところは、この物語の面白いところですね。


 他にも、ドラマとして優れている場面では、登場するキャラクターの過去や境遇が、唯我に与えられた試練を乗り越えるヒントになっていたりして、なかなか憎い演出だと思いました。


 事故により体の一部を失った少年の役をやることになった時には、事故により体の一部が動かなくなった英を見て、失うことに対する恐怖を身近に感じ、自身の演技に活かします。


 登場人物はとても多くて混乱しそうなくらいですが、人物が多いことで生まれるドラマの影響も物語を広げているように感じます。


 養護施設での生活で、家族の大切さに気が付いたり、がんばるための力を得ている。


 イケメンで少しオネエみたいな態度をとったりする、演技の天才の樹杏とは、友情以上で友情以下の関係を築き、自分自身のアイドル像というものを探していくための、いい関係となっていきます。


 他にもいいなと思ったところは、登場人物はあまり唯我にとって都合がいいだけの人物となるわけではありません。


 なかなか仲良くできなかったり、自分の気持ちが伝わらなかったり、デートの約束をしても果たせなかったり。


 うまくいかないからこそのじれったさや悔しさが、物語を読んでいる側にとってはとてもいい刺激となっています。





 一番厄介な存在は、ヒロインの優里子の存在です。


 唯我ががんばったら誰よりも褒めてくれて、落ち込んでいたら声をかけて励ましてくれる、とても優しいお姉ちゃん。


 お姉ちゃんであるだけなら、とてもいい。


 けれど、唯我にとっては、姉という存在はある意味邪魔であるのです。


 年の差があること、施設の職員とその利用者であること。


 禁断の恋、とまではいかないけれど、今の時点でも唯我はまだ中学生。二十歳を超えている優里子にとっては、唯我は可愛い弟であり、男としてはまだまだな印象を持っています。


 唯我は一切ぶれずに優里子のことが好きなんですが、弟というフィルターを通して見ている優里子には、なかなか思いが伝わらない。もどかしい。


 それでも、関係は本当に少しずつ変わっていきます。


 ただの弟であった、子供であった唯我が、優里子の身長を追い抜いた時、それは一つの関係が変わっていく音がした。


 優里子が過去に憧れていた先輩に迫られたとき、自分が嫌な奴だと思いながらも、優里子には俺だけを見て欲しいと伝えます。


 少しずつ惹かれていく思いに気づかないふりをして、関係を続けていく様は、なんともくすぐったくじれったいじゃないですか。なんだかむずがゆい。あっ、蚊に刺されたからか←夏だね


 すげえもどかしいな! と思いながら見ていたら、この感覚は過去にも感じたことがあるなと、ふと思い出した。


 そう、「めぞん一刻」の管理人さんとの恋愛のもどかしさと似通っている!


 高橋留美子先生ってすげえよな。どうしてあんなにめんどくさいキャラクターが描けるのか(※褒めてます)。


 じれったさ、もどかしさ、成長、大きくなるドキドキ。


 時間とともに移ろう恋の行方も、特に見どころだと思います。





 とはいえ、少し気になる点がないわけでもない。


 基本的には一人称なんだけど、唐突に唯我が知れるはずもない情報が混じってくる。三人称に変更したり、一人称の視点変更をするわけでなく、さらっと混ざってくる。


 〇〇は思った。とか、唯我の一人称なら、思ったことはわかるわけない。悟り妖怪かよと。


 ある意味苦肉の策なんだろうけど、一人称ならそのまま貫いた方がいいような気がする。まあ、別に構わないけれど、少し気持ちが萎えるかな。


 初めは文章量の多さに、ちょっと辟易していたけど(読み手としてどうなんだ)、読

 み進めていると、この物語の雰囲気なら、けっこうな文章量は必要だなとは思う。


 だからこそ、読むには少し気合がいる。企画上ほとんど一気読みだから、けっこう体力を使った。


 まあこれは私の都合の話なので、一話ずつ噛みしめるように読めば、そんなに気にならないように思う。





 ぶっちゃけ







 女性キャラより男キャラの方が魅力的だな!(違うんです僕は女の子が好きです)


 イケメンで演技は天才的な樹杏は、明るくて時になよっとしたような態度で唯我に迫ってくるが(嘘じゃない)、演技に対する真剣さや、アイドルを続けることのプライドは人一倍高いです。


 ダンスが苦手だから、唯我に合わせようかと言われたときに、彼は激昂する。


 舐めるんじゃねえ、と。普段のおちゃらけた仮面を脱ぎ捨て、時には唯我と本気でけんかをする。


 凸凹のコントラストを意識したキャラ付けかもしれないけれど、根本の部分は似通っていて、根っこは情熱に浮かされている。


 凸凹ではなく、表裏一体なのだ。


 表裏一体って言えば、ゆずの楽曲にあるけど、この曲はあんまりゆずっぽくないよね←話を逸らすな。


 ちょうど聞いていた時に物語のタイトルでも表裏一体ってあったから、びびった。さては貴様、見ているな?


 唯我の成長、家族愛、なかなか進まない恋愛模様、アイドルへの挑戦。


 一度に色んな気持ちを味わえる、なかなか贅沢な物語だと感じました。























 それにしても、優里子とのイチャイチャよりも弟分の泰一とか樹杏とイチャイチャしている様子の方がワクワクした僕は、もうだめだろうか?




















 ↑手遅れ





 約368万






 やっぱりね、50万字超えるときついわ(言っちゃった)


 30万くらいならまだ大丈夫だけど、50万を超えるとこれがかなりきつくなってくる。


 まだ、まだ終わらないの? と賽の河原で石を積まされている気分になる。面白い物語でも、やっぱりきついもんはきついね。


 でも今回は、なんとなく700万くらいで終わりそうな気がする。前回よりも短い物語が多そうだし。


 それはともかく、青春色の強い物語は、なんだかんだいって好きなのかもしれない。


 学生時代は、それはもう私は恋に恋したものですよ。


 ハンカチを貸してくれたらドキドキして好きになり、肩を叩かれて「がんばれっ」って言われたらドキドキして好きになり、観覧車を全力で揺らされたらドキドキして好きに……あっごめんマジ切れしたわ(高所恐怖症


 挙句の果てには、湖面に映った自分の顔を見て恋に落ちたものですよ←ナルシーか


 でもやっぱり、10代の頃って色んなことが刺激的で、今思えば笑っちゃうくらいに些細なことでも、ドキドキして大騒ぎだった。


 少しだけ手が触れた時、イベント毎に浮かされて、体を寄せあった時、見つめていた表情が切なげに揺れた時。


 メールがちょっと帰ってこないだけで不安でゴロゴロと動き回ったり、遊びに行く前日はそわそわして眠れなかったり、実現したりしていないロマンスに、にやにやしながら胸を躍らせたり。


 今よりも10倍も20倍も、人生を敏感に感じていたのだろう。


 そんな時期が過ぎ去ってしまったことを、ちょっぴり悲しく思うこともあった。


 青春。アオイハル。


 まだまだ心は青みがかっていて、熟して赤らむなどまだまだ遠いこと。わからないことだらけで、人並みに動揺したり悩んだりする。


 愚直さや敏感さは鈍麻していても、人生とはまだまだ青春に満ちているものだ。





 そう、やっぱり女性と触れ合っている時は、ドキドキするものだ!





 でも、先日に女性とイチャコラするお店でお嬢さんに胸を押し付けられて密着した時、








 僕の鼓動はひたすら平常でした(NO青春







 もう俺に、青春は残っていない気がする。

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