65 初恋と幽霊 無月兄様

 おや、過去に作品を読ませて頂いた方が来たゾイと、デデデ大王風に思っていて、なんとなく過去の自分のレビューを漁ってみたりしました。


 うんうん、あの童話の話面白かったなあ。なんといってもヒロインの鈍感さが。


 で、名前を見ると、


 無月様は無月様でも、


 弟様の方でした。









 すいません人ちがいっしたあああああああああ(平伏





 初恋と幽霊 無月兄様


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886240001


 10歳の女の子、藍には優しくて頼りになりお兄ちゃんがいた。


 15歳の高校生、優斗は藍のことを本当の妹のように可愛がり、2人は仲睦まじく交流していた。


 しかし、優斗は階段から足を滑らせて、そのまま亡くなってしまう。


 悲しみに包まれたまま初恋を胸に秘め、5年の時が過ぎた。


 かつての優斗と同じ年になった藍は、優斗と同じ高校に入学し、忘れ形見のベースを抱えて、軽音楽部に入部した。


 これは奇跡なんだろうか。


 そこには、かつてと同じ微笑みを浮かべた、優斗が立っていた。


 未だ秘めた初恋と、幽霊の行方を辿る物語が始まる。





 一番最初の印象は、文章のバランスがとてもいい、でした。


 くどくもなくサラッとしすぎてもいない。物語を語る熱量としては適正であるように感じました。


 藍はとても健気な女の子だなあと感じました。


 初恋を5年間も抱えている姿には、なんだか胸がもやもやとします。


 思い出はいずれ記憶となり、おそらくこの出来事も風化していくのでしょうが、高校生になっても思い続けます。


 優斗の軌跡をなぞるように、同じ高校に入学し、優斗のベースを大事に持って、優斗の所属していた軽音楽部に入部するのです。途切れた世界の続きを探しに行くようでした。


 うーん。早く幸せになって欲しい。


 で、そんな中、初恋の相手である優斗と再会を果たすのですが、彼はどういうわけか幽霊として姿を現したのです。


 作中でも触れられていますが、幽霊がこの世に残る物語って、やはりなんらかの未練はつきものですよね。


 その未練とはなんなのか、幽霊という性質上、おそらくいずれはお別れしなくてはならない運命にどのような態度で挑むのか。


 そういったことが物語の主軸になります。




 欠かせないのが、藍のことを小学生の頃から思い続けて、未だに気づいては貰えない啓太の存在です。


 ぶっきらぼうで不器用で、好きな子にちょっかいをかけることしかできない悪ガキの彼も、5年間で成長を見せます。


 自分の好きな相手が、幽霊とはいえ、仲よくしている姿を見るというのは、身を焦がされるような思いでしょうね。


 それでも、彼は藍が元気のない姿を見つけると、何かあったんじゃないかって優斗に伝えます。


 きっと悔しくて歯噛みしたことだろう。彼女を幸せにするのは、本当なら自分なんじゃないかと思ったことだろう。


 それでも、彼は今できることを等身大でしようとします。


 どうにもならないことやわからないことを、きちんとそのままにしておいて、やれることだけを見据えます。


 初恋と幽霊というタイトルは、藍と優斗だけでなく、きっと啓太にとっても意味のあることなんじゃないかなと思います。





 藍と優斗の関係とは、疑似的な兄妹です。優斗は藍を妹として可愛がっていて、その姿勢は一向に崩しません。


 優斗は今まで恋愛をしてきませんでしたが、そこには当然理由があります。


 ネタバレはしませんが、家族に特別な思いを抱いている彼だからこそ、藍のことを妹として可愛がっていたのではないかと思います。





 一番好きな設定としては、藍が優斗と同じ年になって物語が動き出すところですね。


 可愛がられるだけの妹だった。


 身長も伸びた。顔もちょっとだけ大人っぽくなった。少しだけベースも弾けるようになった。


 妹といった立場から、対等な関係に月日が近づけたようです。


 なんでもできるヒーローのようだった優斗の姿も、彼の思いを告白したことで、等身大の、年相応の人間だったのだと気づくことができます。


 魔法もなく不思議なモテかたも特にない。異世界に行かないし特別な力もない。


 ただ思いがあるだけ。続いているだけ。





 すっごい私らしからぬ綺麗っぽい言葉ばっかりつらつらと書いてきましたけど、どうしても、どーしても一つだけ言わせてください。


(でもなあ、やっぱり物語の根幹に関わるしなあ。いやでも、この物語にはアレがあるっていうことは普通に小説一覧見ればわかるしなあ。ああ言いたい。けどやっぱり言えない。いややっぱり言う! これを言わなきゃスッキリしない。なあに、アレがきっと物語を補完してくれる。僕がここで何か言ったところで大した影響が出るはずもない。よし言うぞ。んっ。んっんっ)






















 〇〇〇ー〇〇〇!


















 まさかの全伏字(チキン)


 思わずツッコんじまったわ!


 内容はもちろん、啓太が言っていたことと全く一緒です!


 もしかしたら、僕と啓太は双子なのかも……←やめろ


 全く、物語の最終の自分の反応を予測して、わざわざ天野月子の「鳥籠」を流して自分自身のムードをなんか悲しい方向に持って行った苦労はなんだったんだ(そんなことしてたのか……引くわ)


 とはいえ、少しだけ思いが繋がって、わずかに動き出した時間の中、少しでも幸せな奇跡が続く様は、とてもいいものだと思いました。





 約245万2千





 あまりにも気になって、双子の質問を見てしまいましたが、回答がほぼ一緒とは……すげえ。


 純粋にいろいろと興味が湧いてきますね。生育的な影響がどのくらいあったのかとか、なんらかの違いはどうして生まれたのかとか、考え方は似通っていても、行動や嗜好に差が出るのかとか、人間関係はどうなっているのかとか。


 そんな知的好奇心はいずれリアルでどこかの双子様に会った時に満たすとして、ふと思う。


 もし自分が双子で、同じようにカクヨムをやっていたのだとしたら……?












 うん。









 ぜってぇにキツイ。

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