60 俺のチートって何? ――異世界転生終焉門―― カーマイン様

 食に興味がない上司が、珍しく「ふぐか寿司を食べに行きたい」と発言したので、どのような店に行くのか興味を持って聞いてみました。


「塩へのこだわりを持った店主が経営している寿司屋があってな、江戸前寿司だからネタの一個一個に仕掛けがあって、ネタごとに合う塩と一緒に提供してくれる」


「へえ。それだけこだわりを持っているのなら、さぞかしおいしいんでしょうね」


「ネタの鮮度と腕は確かだぞ」


 なんらかのこだわりがあるということは、妥協を許さずにその道を突き進んでいくということだと思う。


 せっかくだから、家族でも連れて食べに行こうかな。たまには自分の奢りで。土日にでも行ってみようかな。


 そう考えていたのですが。


「きちんとカウンターに座って、塩について聞くと、色んなことを教えてもらえるぞ。一度聞くと変えるまで語りが止まらなくなるところがおもしろいぞ。大丈夫。5万円あれば足りるから」


 5万円あれば


 足りるから。


 まあまあ、それだけこだわり抜いた逸品を頂くのですから、やはりそれくらいの値段はしますよね。


「うちも家族で食いに行くと、簡単に8万とか行くんだよ」


 うん。それだけ一級品ってことですね。本物と言えるような物を食しておくのも、人生経験としていいかもしれないですね!


















 行くのは来月で(通帳を見ながら)








 俺のチートって何? ――異世界転生終焉門―― カーマイン様


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894943641


 トラックに轢かれて死亡した主人公、渡辺勝麻。


 異世界に転生し、チート能力を得た彼は、悪戦苦闘しながらも協力者を増やしていく。


 俺のチート能力ってなんなのか。


 神の思惑とはなんなのか。


 異世界に生きる全人類の運命とは。


 その答えはここにある。





 けっこう前から言葉として話題になっている、チートっていうものがそもそも何? と疑問に思ったので、改めて意味を調べてみました。


 チート(cheat)

 ・広義にはコンピュータゲームにおいて、ゲームに備わっていない機能を用いることで、使用者が優位になる行為である。

 ・狭義には、ゲームを優位に進めるために制作者の意図しない動作をさせる不正行為(インチキ)を指す。製作者が意図して組み込んだ裏技や、改造行為そのものを含む場合もある。


 語源

 ・英語圏では「ズル」や「騙す」ことを意味するごく一般的な単語であり、また日本語でいう「ペテン師」に相当する「不正を行う者」の俗称である。英語圏では浮気を意味する言葉としても広く使われている。


 Wikipediaより出典




 なるほどなるほど、チートの意味がわかったところで、物語について感想を書きましょう。


 異世界ウォールガイヤでは、現代の日本のような街並みでありながらも、魔人や神やチート能力がはびこる世界です。


 相手の能力を見通せるチート、地雷を扱うチート、見たもの全てを死に至らせるゴルゴンの眼の強化版みたいなチートもあります。


 主人公も異世界転生者ですが、主人公だけでなく異世界転生者が普遍的に存在する世界観です。


 異世界転生者が自分の知っている知識や能力を駆使して無双する話というものをほとんど読んだことはないのですが、おそらく異世界転生者って主人公一人、もしくは複数名のみに絞られるような気がします。


 異世界転生者がはびこっているようであるなら、主人公が無双するといった個性を発揮しづらくなる可能性があるからです。


 そう考えると、異世界転生者が別にふつーにいるような世界であるのであれば、主人公無双を目指した物語というわけではなさそうです。


 あと、主人公自身の能力はよくわからず、実力を発揮することにはブレがある様子。他のキャラクターからも、以前の6割ほどの力しか出せていないと指摘を受けます。


 自身の能力の本質を探し、安定的に力を発揮していくための方法を探していくこと、自分と向き合うことなども物語のテーマとしてはありそうです。





 文章は簡素というわけでなく、たぶんやろうと思えばいつまでもダラダラと長くなってしまいそうなところを、できるだけわかりやすく抑えているんだろうなと感じるので、読みやすくてとても好感触です。


 作者様なりの哲学も色濃く感じるところは個性的で良いと思いますし、物事の原因と結果をもとに分析を行うような描写も、個性であると思います。


 あとは設定についても、氷魔法と炎魔法を持った両親の下に生まれると、子供は両方の能力を有する、なんかを見た時


 ポケモ〇やらドラゴンクエストモ〇スターズやらモ〇スターファームやらを思い出しました。いやでも、そもそも親の遺伝子を子が受け継ぐから当然っちゃ当然なんですけど。


 そういった継承の仕様を使って、自分たちに有利で有能な子供を誕生させようとしたなどという世界観は、結局現代の遺伝子操作と変わらないのかもしれない。


 とある関りから親のように慕ってくれる女の子や、パートナーと呼ばれる相手との関係などを通じて、きっとこれからも成長していくタイプの物語が見れることでしょうね。





 で、この物語には前作があり、今回読ませていただいた物語は第2部となるようです。


 作者様はことらから読んだとしても物語についていけるようにしているようですので、世界観はなんとなくわかりましたので、こちらから読んで興味を持ったら前作を読んでも良いのかもしれません。


 それではこの物語の初章を読んだ際の率直な感想を。


 それで、この物語って一体何の目的を目指しているんだろうか?





 8話まで読ませて頂いたところで、とりあえずの目的は「人類を脅かす魔人の殲滅」であるようです。


 初めの方では、現代社会での描写であったため、物語の核をあまりつかめずにいました。異世界パートに行って、ようやく主人公とは誰かということがわかったのです。もちろん誰かはわかるのだけれど、ようやく主人公感を感じたということです。


 こちらから読み始めた人への配慮なのかもしれませんが、だからこそ説明の感じが強かったのかなあというところで、あまり物語に入り込めなかった。


 後は、物語の目的について考えることは、もうちょっと序盤にあっても良いのかもしれない。


「ワンピース」ではルフィが海賊王になるという明確な目的があります。


「進撃の巨人」では巨人への抗い明確な目的があります。


 書類を作るにしても、会議をするにしても、支援をするにしても、まずは何を考えるのかというと「それはなんのためにやるのか」という目的や目標のためです。


 到達目標「ゴール」が設定してあるからこそ、計画や道筋が立てられるのです。


 この物語にももちろんありますし、序盤からなんとなく悟ることはできるのです。父親や家族に関する思いなどとの折り合いの付け方とか、荒れた世界を守っていくだとか、パートナーシップの形成とその過程を楽しむだとか、神の思惑を見つけるだとか。


 しかし、なんだかどれも少し弱いように感じてしまう。


 明確な目的があるから人は頑張れるのであり、そのための道筋をたどっていると確信できていれば、疲れていても歩き続けられるように思います。


 明確な目的やそれに伴うゴール設定があった方が、すんなりとそこに向けて気持ちが向いていったように感じます。壮大な世界観はテーマの混在化を招くように思います。


 支援計画を立てる時には


 大きな目標→アセスメント→会議による取りまとめ→支援計画書作成→モニタリング→会議による取りまとめ→支援計画書作成


 など大まかな希望、目標、ニーズの抽出など、を設定しているから、達成のためのプロセスを策定できるのです。


 壮大なテーマの中で、主人公がどうしていきたいのかについてもっと序盤に語られていたら、物語に心を奪われる人も、もっと多くなるのかもしれないと思いました。





 約130万





 チート言葉を改めて調べてみた結果思った。


 チート能力がどうこう言っている物語って、別にチートではなく突出した能力やん。


 製作者の意図しないズルやバグというより、ただ単に能力が優れていた。それだけの話なような気がする。


「賢者の孫」だったかな。「俺なんかやっちゃいました?」ってセリフばっかりが有名な奴。


 いや、あれがチート系なのかもそもそも知らなくて申し訳ないんだけど。


 チート。チートかぁ。


 自分自身にはチートと言えるような突出した能力って、特にないな。


 チートって言葉は言葉の意味からして良くないように、本来は罵られ忌避されるものだと思うのだけど、どうしてこんなにも支持を得ているのだろう。


 なんとなく、自己の特別性を満たせるという要素を感じる。


 人間は本来みんな個別的であるのだけど、集団に埋没すればそれはただの一部分となる。


 個性が大事という教育がどんどん進んでいるみたいだけれど、そんな個性を見つけられないと嘆く声も聞こえる。


 個性という言葉を良い風に捉えすぎじゃないかな。ぶっちゃけ世間的にみて悪い人というのも個性ではあると思う。


 突出した能力、社会に貢献しているような善性。そういったものが個性であると判断されるのかもしれない。


 何かしらにとって良いことのみを個性として認めるのであれば、そりゃあ大半の人間にとっては生きづらいし拗ねてしまうかもしれないよ。


 自分らしさは良いところも悪いところも含めてだし、良くも悪くもない自分自身を認めて、別に良くも悪くもない世界をまあまあ生きていて欲しいなあと思う。


 良い人でなくても、悪い人でなくても、みんな特別ではある。


 それを認めるのは自分自身だ。他人に求めるのは苦しみのもとかも。


 米津玄師の「シンデレラグレイ」での歌詞の一節には、鋭い考察を感じる。



 痛む心 癒えないのは


 無様なほどに 期待しているから



 自分自身の満足を、どうしてくれるかもわからない他者にゆだねているから、願望が満たされずに、「勝手に」傷つくのだ。








 自分にチート能力はないけど、上司は割かしチート的な人だと思う。


 小学生の頃から大体のことを一人でできてしまうタイプだったため、通知表には「協調性がない」とはっきり書かれたらしい。


 小学生への通知表に協調性がないって、率直すぎておもしろすぎる。


 それを見た母親はとても悩んだらしいけど、上司は自ら母親を慰めた。




「協調性がないってことは、物事を一人で解決していけるっていうことじゃないかな。だからある意味では悪いことではないのかも」







 この言葉で、母親はさらに思い悩んだらしいです。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る