41話 さようなら、また何時の日か
お祭りが終わりアーカムには日常が戻って来る、そしてアレックスは王都に帰る事になった、本当は少し顔を出すだけの予定だったのを無理を言って延ばしてもらっていたらしい。
お店の前にアレックスが乗って帰る馬車が止まっている、再開してまたお別れ。
分かっているけどやっぱり友達になったのに遠く離れるのは辛い、でもそれは仕方が無い事だ、アレックスの家族は王都に居てボクの家族はアーカムに居る。
「皆さん、お見送りありがとうございます」
アレックスはお辞儀をする、もう少し一緒にいたかったな。
とても楽しかった、もっと遊びたかったけど仕方がない。
後ろ髪は引いちゃいけない、笑って見送らないといけない。
「アレックス、これでお別れだね」
「ああ、次はいつ来れるか分からないからな……」
ううん、ボクとした事がうっかり湿っぽくしてしまった。
アレックスも少し顔が暗くなってしまった、ならボクが思っている事を素直に言おう、変に取り繕わずにありのままの自分の言葉を伝えよう。
「でも、さよならは言わないよ…今度はボクが王都に行きますから」
「え!?」
「ボクは勉強が大好きだから、将来は学園に入学するんだ、学園は王都に近いからそしたら何時でも会える」
「マリア…俺も学園に入学するのは決められてるから、そしたら一緒に通えるな!先に行って待ってるから必ず来いよ!」
「はい、絶対に入学するから、だから待っていてください」
「ならこいつが目印だ」
お弟子さん達の露店で買った片翼の鳥の装飾が取り付けられたペンダントをアレックスは取り出して掲げる。
「うん、目印だ」
ボクも取り出して掲げる、必ず会おうと約束の為に。
そしてボクは笑ってアレックスを見送った、アレックスも笑ってアーカムを後にした。
そしてボクには将来の夢、一つできた。
友達と同じ学校に通う、生前は苦しいだけの学園生活だったけどアレックスがいるならきっと楽しい学園生活になる筈だ。
だからボクは必ず入学するんだ。
お母さんが通っていたソルフィア王国で最も権威ある教育機関、王立イリアンソス学園に入学するんだ。
「それにしても、マリアもやっぱり女の子なのね……」
「どうしたんですか、お母さん」
「だって、あれって……」
「?」
友達に一緒に同じ学校に通おうって言っただけなのに、何でお母さんは遠い目をしているんだろう?
「あーベティー、きっとマリアはそういうつもりで言ってないと思うね」
「?」
「ねえ、マリア…マリアはアレックス君の事をどう思ってるの?」
お母さんは変な質問をしてくる、どう思ってるって大切な友達だけど、それ以外に何があるんだろう。
それにボクの返答を聞いた皆が頭を抑えたりしているけど、あれ?ボク、変な事を言ったのかな?
「こりゃあ、無自覚か?それとも本当にそう思ってんのか?」
「どちらもかもよぉ、マリアはぁ天然さんだからねぇ」
何だろ、皆の目が残念な人を見る目だ。
ボクは変な事をしたんだろうか?
まあ、いいか。
確か学園に通える年齢は12歳からだ、まだ5年もある。
しっかりと勉強して約束を守らないといけない。
今から楽しみだ。
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