16話 何度言われても投資です!!
「嬢ちゃんの注文通り、出来たぞホットサンドメーカー」
親方さんにホットサンドメーカーを注文して三週間後、ついに完成した。
本当ならボクが直接受け取りに行く予定だったんだけど親方さんが気を利かせて持って来てくれた。
ボクは受け取ったホットサンドメーカーを持ってみて感触を確かめる。
手に持った感じは少し重量はあるけど閉めた時の感じはしっかりと閉まっていて、うんパンの耳も一緒に挟んでもしっかりと閉まりそうだ。
「ニムにも手伝ってもらって試作していたが、実は他にも幾つか試作してんだ」
親方さんがそう言って試作中のホットサンドメーカーを見せてくれた、二つに分割が出来る様にして収納しやすくした物やパンの耳を切って入れる事を前提にした物、他にも面白い形状の物まで色々と試作しているみたいだ。
「前からギルガメッシュ商会から売ってくれと催促されてんだが、売り出してもいいか?」
「ええ、構いませんよ」
「わりーな、んでよまた儲けちまうんだが今度こそ―――」
「受け取りませんよ、投資ですよ」
「……」
ボクのお母さん直伝の笑顔で威圧を受けた親方さんは深い溜息を吐く、親方さんには悪いけどボクは1ソルドも受け取るつもりは無い。
何度言われても何度でもこう言う「投資です」と、なので今回も投資で次回もまた投資のつもりだ。
まだ親方さんに作って欲しい物が沢山ある、ボクは用意していた図面を取り出して親方さんに見せる。
「ん?今度はジューサー?
「リンゴを等分にする道具です!」
リンゴカッターってしっかりと図面に説明書と一緒に名前も書いてあるのに、何でジューサーはすぐに理解できてリンゴカッターを拷問器具だなんて思ったんだろう。
「こうれくらいなら、一週間もあれば作れるが……まだ作って欲しい道具があるみたいだな」
「ええ、まだまだこんなに」
ボクはそう言って描き溜めている図面の山を親方さんに見せる。
親方さんは一瞬「何だこいつ?」と言う感じに引いていたけど、すぐに職人としての好奇心が勝って図面を次々と見て行く、呆れたり驚いたり、その顔の変化はまさに目の前に玩具を差し出された子供の様だった。
「アホらしいのから驚きな物まで、嬢ちゃんの頭の中はどうなってんだ?」
「簡単です、飽くなき探求心が詰まっているのです」
「そうかい、程々にな」
何故か親方さんは呆れ果てているけど、でも楽しそうでもあった。
「そういやギルガメッシュ商会の奴等がよ、何でもお礼がしてぇと言って来てるんだが、どうするよ?」
「どうと言われましても、親方さんにお任せしますとしか言えませんね、実際に作っているのは親方さんですから」
「ううむ、なら嬢ちゃんの迷惑にならねぇ程度には名前は出すが良いか?」
「はい、かまいませんよ」
ギルガメッシュ商会とはお店で出しているお酒を違法すれすれの方法で、お店で提供しても何とか利益が出る価格で卸して貰っている関係から色々と深いお付き合いをしている、だから別に知られても問題は無いと思う。
それに親方さんが考えている訳じゃないのに、親方さんが考えていると思った人達が無理難題な注文をするかもしれない、それを考えたらある程度まではボクの名前を出す必要がある。
今後とも親方さん達とは親しくして行きたいから、多少の不利益は目を瞑ろう。
「助かるぜ、なんせ連中と来たらよぉ新しい馬車を考えてくれとか無茶言ってきてな、困ってんだよ」
「それって街の鍛冶屋に頼む仕事じゃないですよね……」
「普通はもっとデカい工房に言うもんだな、特に蒸気機関で動く馬車なんざ……」
おっふぅっ!?そう言えば鉄道が敷かれてるの忘れてた、歴史の授業で世界初の自動車の設計図なら授業と、社会見学で行った自動車メーカーで教えてもらったから頭の中に入ってる、他にも
ソルフィア王国の科学技術がどこまで進んでいるから分からないからはっきりと言えないけど、その無理難題、たぶんだけど解決できると思う。
けど今は関係ないから黙っておこう。
ボクは蒸気機関の事は頭の隅に置いて、再び親方さんに幾つかの注文をした。
それから少しして王都でホットサンドメーカーが爆発的な人気を得る事になり、親方さん達は死ぬ程忙しくなってしまう。
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