15話 ボクとメイド道

 土曜日、朝食が終わった後に女将さんに呼ばれてボクは中庭に来ている。


「さて今日からマリアにはメイド道戦闘術を習ってもらうよ、とその前に制御はどこまで出来る様になったか見せてもらえるかい」

「はい、分かりました」


 そっか忘れていたけどメイド道には戦闘術があったんだ、主と自分の身を守る為の護身術であり如何なる状況でも生き抜く戦闘術、いよいよボクの修行は本格的になるんだ。


 よし出だしが肝心だ、今までの修練の成果で女将さんを驚嘆させ見せるぞ!


 ボクはまず基本である身体能力の強化を行う為に全身に魔力を纏い、その状態を維持した上で自分の両手に魔力を集めて強度を上げる、今はまだ少しだけ丈夫になるだけだけでテレビみたいに手刀で物を切るとか出来ない、でも何時か必ず出来る様になるぞ。


「どうですか女将さん?」

「……え?冗談だろ」


 ボクを見る女将さん何と言うか…よく漫画とかである目が点になった顔になっている、あれもしかしてボクはそんなに上達していなかったのかな、普通ならもっと成長しているものなのかもしれない、とボクが不安に思っていたら女将さんは満面の笑顔になってボクの頭を撫でてくれた。


「天才だとは思っていけど、まさかその歳でそこまで上達するとはね。驚きのあまり放心しちまったよ」


 良かった、ちゃんと上達していた。


「これなら問題なく戦闘術を教えられるね、アデラ!」

「はい…」


 女将さんの合図でアデラさんは土で人形を作る。

 そう言えばアデラさんは土属性の魔法を使い手だった、今みたいに土人形を作って動かす事が出来る。


「よく見てな、まず基本の心構えは常在戦場、身に着ける衣服には常に武器を隠し持つ」


 そう言うと女将さんは一つの動作だけでナイフを取り出して投げる、正直言ってどこから出して何時投げたのか分からなかった。


 ナイフは土人形の眉間に突き刺さったと思ったら女将さんは地面の小石を拾って親指で小石を弾く、それは銃口から打ち出された銃弾の様に飛んで行き土人形の頭部を吹き飛ばす。


「時として手近な物を武器に変え、次に―――」


 女将さんに頭部を吹き飛ばされた土人形はすぐさま頭部を再生させて、女将さんに向かって突進する、それに対して女将さんは円を描く様にそして土人形が自分から投げられに行ったとしか思えない程、鮮やかに投げ飛ばした。


「相手の力を導き、利用して崩すという護身と―――」


 投げ飛ばされた土人形が立ち上がり負けじと女将さんに走って行く、今度はさっきとは違い土人形は殴り掛かる、それを女将さんは払ったり上手く逸らしながら受けたり、そしてカウンターを決め一気に攻めに転じて殴り、蹴り、そして関節技を決めて土地人形を徹底的に破壊する。


「相手を打ち倒す格闘だ、メイド道ではこれを総じてメイド道戦闘術と呼んでいるさね」

「おお……」


 圧巻だった、護身は合気道に似ていて格闘術は何と言うかそう昔テレビで紹介されていた自衛隊のレンジャーの人がやってみせた格闘術に似ていた、でも納得だ。

 だから皆、一切の隙が無くて明らかに一般人と違う雰囲気を纏っていたんだ。


「ただメイド道では基本的に武器の扱いや護身の方を重要視している、相手に打ち勝つより主を守る事を優先しているってことさね」


 女将さんはそう言いながら掴んでいた土人形の頭部を投げ捨てる、地面に落ちた頭部は元の土に戻った……え?護身を重要視している?明らかに女将さんは格闘の方を重要視している様な……細かい事は気にしちゃいけない!そう後半は見ていたけどよく覚えていません。


「これがメイド道…これからボクはこれを習うんですね」


 なのでボクを神妙な顔で女将さんを目を真っ直ぐ見る。


「そうだよ、でもまあ挌闘は後回し、先に護身と武器を使い方を覚えてもらうよ」

「はい分かりました」


 こうしてボクのメイド道の修練は本格的に始まった。

 まずは足運びや受け身の取り方から入り、相手の攻撃のいなし方や守り方、メイド道の基本である常在戦場の心構えで日々を過ごし、気付けばボクは5歳になり魔法や勉強みたいに段飛ばしで成長する事はなかったけど、それでも一歩ずつ前へ進んで行った。

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