15話 君まで驚いてどうするの?
「な、な?!な?!なにいぃいい!?」
部屋に入って来た司祭様はお母さんに質問攻めにされているヒポグリフを見て絶叫する。
何をそんなに驚いているんだろう?もしかしてヒポグリフが危険だと思っているのかな?でも、事情は聞いていると言っていたから僕がヒポグリフに助けられた事を知っているはずだから、ここにヒポグリフが居てもおかしくない筈だけど……。
「本当に聖獣に助けられていた、とは……」
聖獣?ヒポグリフの事だよね。あれ、でもお母さんとかは魔獣だと言っていた。
どういう事だろう?
「はぁ?ヒポグリフは魔獣だろ?ガキん時に習ったぜ」
呆れたと言わんばかりにリーリエさんは司祭様に言うと司祭様は顔を真っ赤にして絶叫する。
「それは
一同絶句、いや君まで絶句してどうするヒポグリフ。
「グリフォンの亜種だとでも教わったのか?愚か者が!!形こそ似ているが全くの別種、グリフォンは合成魔獣、ヒポグリフは精霊種だ!」
リーリエさんはヒポグリフを見て、こいつが?という顔をしている。
そして何で君まで驚いているんだヒポグリフ!
「お前たち、まさか、危害を加えてはいないだろうな?」
僕もお母さんもリーリエさんも大きく首を横に振って否定する、それに対して司祭様は「本当だろうな?」と疑いの眼差しを向けて来る。
「はぁ、どうしてヒポグリフを魔獣と勘違いする輩が後を絶たないのだ……」
司祭様は心底疲れた顔をしている。
「王室の守護獣でもあるというのに、学者どもはグリフォンの亜種だの、グリフォンと馬の混血児だの、幼体は子供を襲って食べるだの、確かに雑食だが草食を中心だというのに…そもそもヒポグリフは子供好きで捨て子を拾って育てたという実話もある……」
司祭様は心底疲れたという顔で近くにあった椅子に座って深いため息をつく。
でも思った通り、ヒポグリフは危険な魔物じゃなかった。
僕はヒポグリフに近付いて抱きしめる。
感謝を篭めて。
「ありがとう、何時も僕を見守ってくれていたんだね」
「クア……」
ヒポグリフは短く返事をする。
「それに助けてくれてありがとう、すごくカッコよかった」
「クァア……」
今度は照れくさそうに返事をする。
そしてとても抱き心地が良い、触り心地も最高でずっと抱きしめていたいし撫で続けたい。
「それでどうするんだ?」
司祭様は僕とヒポグリフを見て訪ねて来る、どうするって?何をどうするという事だろう……。
「ヒポグリフは、基本的に世界樹に住み世界樹を守護する王室を守る、だが時折群れの中から旅をする個体が現れ、その個体の多くは世界樹に戻るが、稀に人と暮らす個体が現れる、その子も旅をしている途中で君を見つけて気に入ったのだろう」
僕はヒポグリフを見る、ヒポグリフは僕を見る。
答えは決まっている、僕はお母さんの目を真っすぐ見てハッキリと言う。
「お母さん、僕はこの子と一緒に暮らしたい」
「……分かったは、でも女将さんが駄目と言ったら、諦めてね?」
「分かりました」
女将さんなら、たぶん良いと言ってくれると思う。
何だかんだと言って暴力で追い払う事を禁止していたから、女将さんも薄々はヒポグリフが危険な魔獣じゃないって分かっていたかもしれない、後は周りの皆をどう説得するかだけど、こんなに可愛くてカッコいいのだ、皆も分かってくれると思う。
「マリア、君は不思議な子だ」
「僕が…ですか?」
司祭様は僕とヒポグリフを交互に見ながら優しく微笑む。
でも何か含みが篭っている、そんな気がした。
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