16話 今日から友達
「えへへ~」
「クァ~」
ボクの膝の上でヒポグリフは気持ちよさそうな声を出す、ああ撫で心地最高だ。
小柄な柴犬と変わらない大きさで僕の膝の上で寛ぐ姿は可愛らしい、助けてくれた時は騎士の様にカッコよかった、可愛くてカッコいなんて最強だ。
あの後すぐに女将さんや皆がお見舞いに来てくれて、その時に女将さんから一緒に暮らして良いと許可を貰った、後はお医者様が戻って来て退院の許可が下りれば全てが無事に解決する。
ちなみに何で病室にヒポグリフが居るのかと言うと、ヒポグリフは風の魔法が使えて並みの人間よりも強いらしく、僕の護衛として一緒に居る。変態黒男は護送中に逃亡したらしいので、また襲われる危険があるからヒポグリフと一緒に居るのだ。
幸せだ、生前から動物とこんな風に暮らしたいと思っていたし友達も欲しいと思っていた、どっちも叶う事なく死んだけど、まさか転生した先で両方とも一度に叶うなんて、最初は女の子に転生したと分かった時は生前の生前で何かやらかしたのかと思っていたけど、うん、もうどうでもいい。
「可愛いなあ~カッコいいなあ~」
顔が自然とにやけてしまう。
コンコン、コンコン。
唐突にドアを叩く音が聞こえて「私だ、入るよ」と司祭様が部屋に入って来た。
「調子はどうだ、気持ち悪くなっていないか?」
優しい笑みで、今度は含みの無い笑顔で訪ねて来る。なので素直に「大丈夫です、特に変な所はありません」と答える。
「それでも何か変調があればすぐに言うんだぞ、一応、瀕死の重傷を負ったのだから……」
「はい、分かりました」
でも2日経って痛みも引いた、倦怠感はまだあるけど特に変な所はない。
お医者様が戻れば即日、退院して良いと言われる筈だ。
「まあ、並みの子供3人分を平然と平らげるのに何か不調があるとは思えないがね」
「ううぅ……」
そうなのだ、僕は前から結構な量を食べていたけど生死の境を
そして僕みたいに魔力の総量が常人離れしている人はよく食べる人が多いらしい。
生きるているだけで自然と魔力は一定量は必ず消費される、故に僕の食事量はこの先も人の倍以上が平常となるらしいのだ。お母さんも魔力に目覚めてから食べる量が倍になったと言っていた。
「そう言えば、ヒポグリフの名前は決めたのか?」
「名前ですか…ねえ、君の名前は何て言うの?」
「クエ?」
ヒポグリフは首を傾げて何の事という声を出す、人と変わらない知性があるなら名前とかもあるのではと思ったけど、そもそも名前という文化がヒポグリフにあるのだろうか。
「マリア、ヒポグリフには名前の文化は無い、長年生態の研究を行っている学者が断言している。」
「そうなんだ、僕が決めても良いのかな?」
「クア!」
僕がそう聞くとヒポグリフは
ううん、名前か…どんな名前が良いのかな、カッコいい名前か可愛い名前か、マロンとかクッキーはペットに付ける名前だ、僕にとってヒポグリフは大切な初めて出来た友達だ、ペットの様な名前は付けたくない。
なら、強く印象に残った事を基にして名前を考えよう。
最初にヒポグリフを見て驚いた、次にカッコいいと思って次第に可愛いと思うようになった、そして騎士の様にカッコよかった。それならば名前は一つだけだ。
「アストルフォ、君の名前はアストルフォだ」
「クア?クエ!」
喜んでくれたのだろうか、たぶん喜んでいると思う。
嬉しそうに床を飛んだり跳ねたりしているから、良かった。
「アストルフォ…か、ふむ……」
「司祭様?」
さっきまで優しく微笑んでいたのに、今は険しい顔で考え事をしている。
変な事を言ったのかな、でも名前に関してフランスやドイツとか時には北欧系の名前の人もいるのだから、アストルフォという名前は別に変ではないと思うのだけど、もしかして海外では普通でも日本では爆笑もしくは卑猥とされる名前、エロマンガ島と同じ理由で、アストルフォという言葉はソルフィア王国では奇妙な名前だったのかも!
「ああ、すまない、良い名前だ。ただ雌なのに男子の名前なのが気になってね」
「へ?女の子?」
「そうだ、ヒポ…アストルフォは雌だ、気づいていなかったのか?」
「……はい」
「クェ~」
司祭様とアストルフォから呆れた眼差しを向けられる。
だって、だって仕方ないじゃないか!あの時、すごくカッコよかったんだから!まるで騎士の様だったんだから!!
「変更は?」
「グェ~」
アストルフォは首を横に振って否定する、一度決めたなら変更は無いと言いたいみたいだ、ただジト目だった。これは性別を間違えていた事に対する抗議なのか、一度決めた名前を変えようとした事を不服に思っての事なのか……。
「ごめんね?」
「……クエ」
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