花と私と種と

春風月葉

花と私と種と

 生まれ変わったら何になりたいか?

 それは身も蓋もないことで、考えたところで意味などないのだろうけれど、私はふとそんなことを考えた。

 できることなら、私は花になりたいと…そう思った。

 それはきっと、私という者の生が、ただただ長いばかりで中身の無いことが原因であろう。

 故に私は憧れる。

 花という者の生き方に。

 短き生の内、さらに短き花開くそのひと時に、持ち得る命の全てを燃やす。

 まるで私とは正反対の美しい生き方であろう。

 生まれながらにして生きる理由を持ち、手に入れし己の個性とも言える鮮やかな色を堂々と誇り、少しでも長く花であろうと命を削る。

 あぁ、なんと素晴らしい生き方だろう。

 未だ生きる理由さえも見つけられず、いたずらに命を消費する私が恥ずかしい。

 あぁ、なんと悲しい生き方だろう。

 花になれなかったことを悔やむ度に、瞳から涙が溢れる。

 せめてこんな私の想いが、花々の輝きを一秒でも長くできたなら。

 そんなことを思いながら、落ちかけた水滴を爪の先に乗せてポタリと乾いた大地に落とした。

 私の花弁は何色だろう?

 私という名前を付けた花は、枯れた大地に芽を出さない。

 花を咲かすことのできないこの種と私、どちらが幸せなのだろう。

 私はまた、そんな意味もないことを考えた。

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花と私と種と 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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