❸宝井舜介君の事案ー冷やしチート始めました。
俺の体は白銀に緑色の縁取りと飾りのつけられた甲冑と濃緑色のマントで飾られる。これまでファンタジーをバカにしていたが、これはこれでどうして、テンションが上がるじゃないですか。マーリンは俺を跪かせる。
キングは
「余、キング・アーサー・ペンドラゴンは汝宝井舜介を騎士に叙す。汝はガウェインを名乗れ。汝は王とその臣民、そして正義に忠義を尽くすや否や?」
もう、俺も半分ヤケになっていた。
「誓います。」
俺が誓いを立てると王は剣を収め、マーリンが俺に一振りの剣を手渡した。ズシリとした重量感がある。
「魔剣『ガラティーン』です。これがあなたの剣です。」
俺はそれを受け取るとベルトに下げる。鞘から抜き放つとそれは怪しい光を放った。俺が狩りで使う大剣よりかなり小さいが、えもしれぬ重みがあった。
「魔剣?」
「ええ。これで敵の血を吸わせると、そのゲノムを解析し、相手にもっとも脅威となる形をとります。しかも、あなたはその能力を自由に使えるのです。」
おっと、それがほんとなら結構なレアアイテムじゃないですか。
「そうです、それがあなたに与えられた新たな身体、『ウリエル』の力なのです。」
じゃあ、今、これ使えばここから脱出できるじゃん。それをマーリンンに見すかされる。
「あなたやっぱり平凡ですね。まだ、一つも能力は入っていませんけどね。」
そうですよね。ゼロスタート、ですよね。
「さあ、気を取り直してください。もう一つは私からのプレゼントです。」
マーリンは杖を俺の肩にあてると何やら念じた。
すると、床に魔法陣のような紋章が浮かぶと、人型の物体が湧いて出た来た。緑色のただの人型で、顔すらない。不気味ですらあった。
「何です、これは?」
俺が尋ねるとマーリンはにっこりと微笑む。
「あなたの
俺が手を差し伸べるとその人型は俺の手を握った。そして、ゆっくりと形を変える。その姿は俺の幼馴染、「キャロライン・美鈴・フーバー」のものになった。
「キャル?」
俺はおどろく。「キャル」は口を開く。そう、いつものキャルの声だ。
「私はベルゼバブ。この姿は
うむ、きみの記憶データより若干胸部のパーツが大きいように思えるが……。気のせいかね?」
「問題ありません。彼は『オッパイ星人』なのです。」
マーリンの答えに俺は図星をつかれ、言葉を失った。
「そうか……。きみは『地球人』ではなかったのだな?」
ベルゼバブの返しも相当なものだ。
「この『ベルゼバブ』は我が民の知恵をあなたの意思に応じて具現化させるアプリなのです。生物の遺伝情報を自由に読み書きする、という能力に特化していますよ。
まあ例えるなら『ドラ◯もん』と言ったところです。どうです『の◯太』君、気に入っていただけましたか?」
マーリンの説明をベルゼバブはまた間に受ける。
「よろしく『の◯太』。」
「だれが『野比◯び太』だ。俺は宝井舜介だ。だいたい、そんな説明だけで何が分かると言うんだよ?」
「では舜介=ガウェイン、仲間を紹介しよう。ここは君の自室だ。そしてこの扉の向こうが『円卓の間』になっている。付いて来たまえ。」
キングが勝手に話を進め始めた。もはや俺の意思とは関係なく話は続いているようである。
もはや会話にもなっていない。
「ところで、俺は脳だけ摘出されてコンピューターの部品になったはずだが、なぜ身体があるんだ?」
俺は仕方なく歩きながら、傍らのベルゼバブに尋ねた。
「ここは、
ベルゼバブの答えに俺が頭上にクエスチョンマークを乗せていると、マーリンが付け加えた。
「要は
なるほど。少しは理解できた。まあ、身体が無い以上、ログアウトは不可なわけだ。
「俺、ファンタジー系はなあ……。」
苦手、と言おうとするとマーリンは
「大丈夫です。あなた、かなりのチートキャラになってますから。さあ、こちらです。」
大きな金属製の扉が音もなくゆっくりと開いた。
ここから俺の冒険が始まるんだ。新しい仲間たちとともに……
「いいえ、しばらくは引きこもりだよ。」
ベルゼバブが俺の出端を挫きやがった。
さて、俺の活躍を期待したなら、「娘連れ狼無頼帖―Lone Wolf &Kitty」を読んでくれ。ああ、連載はもうちょい先か。
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