②「天使なんかじゃない。」
「みなさん、こんにちは。どうやらお困りのようですね。」
天使か?天使が現れたのか?ということはあの世からお迎えが来た。いや、むしろもう俺たち死んでいるのか?様々な思考が迸る。
青年は興味深そうにみなを観察すると微笑みを浮かべながらこう言った。
「安心してください。私は皆を『助け』に来ました。」
「て…天使様。お救いくださるのですか?」
皆の顔が輝く。
「ちょっと待ってください。『助け(to aid)』に来たのです。『救け(to save)』に来たのではないですから。」
意外とも思える『天使』の言葉に哲平は我に返る。そうだ、まず自分がなしうることをしなければならない。
「あなたは何者なのですか?どうやってここに来たのですか?」
哲平の問いに青年はうなずいた。
「私は『管理者』です。この
彼の話は興味深く、皆は今が深刻な危機であることをすっかり忘れて彼の話に夢中になっていた。科学者の悲しい性である。彼らは人間の三大欲に加えて「知識欲」を持つ罪深い生き物であった。
彼は「霊体」であった。オカルト的な意味ではない。彼の体を構成するのは「電子」ではなく「重力子」なのである。重力子はこの物質宇宙に存在するといわれる
「電子が占める割合はこの宇宙の4割でしかありません。この宇宙で
人類最大級の謎があっさり解決ナウ。哲平は量子物理学は門外漢だったがこの話に大興奮だった。
「ではどうして、今のあなたには質量が存在するのですか?」
「少しは自分でも考えてください。皆さんもご存じの相対性理論ではE=MC2、すなわちエネルギーとは質量に光速の2乗をかけたものに等しくなります。逆に質量をもたせるにはM=E/C2、つまりエネルギーを光速の2乗で割ってやればよいのです。簡単にいうと、電子と重力子の媒介となるのがC、つまり光です。光は原則的に速度を変えることはできませんが、代わりに振動数を変えることができます。電波や電磁波の正体が光と同じ光子であるのと同じです。私は振動数を変えて皆さんに私の姿が見えるようにしたのです。いわゆる『化肉』という現象です。それが先ほどの発光現象の正体です。」
「やはり、天使なのですか?」
「くどいですね。確かに創造主が天使を作った同じ材料で今の私の体もできています。ですが私の姿は創造主がそうしたものではなく、もともとは皆さんと同じ電子体でした。ところで皆さん、何か大切なことをお忘れではありませんか?」
青年は本題に入ろうと水を向ける。
「そうでした。私たちはあなたをなんと呼んだらいいでしょうか?」
可南子の少しずれた問いに青年はずっこけそうになる。
「お好きに呼んでください。私の名前をこの電子世界の音で正確に表すことはできませんから。」
少しあきれ気味の青年に可南子は満面の笑みを浮かべ提案する。
「では大天使ガブリエルでどうでしょう。」
暴走ぎみの可南子に哲平も再び我に返った。
「長いからゲイブでいいでしょう。本題に入ります。どうすれば俺たちは助かりますか?ゲイブ。」
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