2220年、オーストラリア。不知火尊君 (18) の事案。
❶ 妹が同級生になったら!
朝6:00。目覚まし時計のベルがけたたましく鳴り響く。しかし、電子音なのにいまだにベルというのはどうかとも思う。俺の名前は
とりあえず俺は枕を抱きかえ、二度寝を堪能することにした。
「お兄ちゃん!」
どたどた足音を立てて妹が階段を上がってくる。
「おい、起きろ。」
布団をめくると、柔らかい足の裏でげしげしと踏みつけてくる。ああ、妹よ、それはマッサージにすぎない。
「だー、痛い。顔を踏むな。起きるから、ちょっと待って。大体兄に対する敬意はないのか。」
突然の無慈悲な攻撃に俺はたまらず抗議の声を上げる。
「今年から同級生じゃん。悔しいかね?。尊君。」
妹の名前は
「寒いよ。着替えられないじゃないか。」
俺は抗議の声をあげるが、庭に咲いた河津桜のビビッドなピンク色が目に飛び込んできて春がもうすぐであることに気付いた。え?季節がおかしい?
ここは南半球のオーストラリアだからねえ。これでいいのよ。
「もう、毎日毎日手をかけさせないでよね。」
スクールバスを降りても妹のお説教は続く。
「おす!尊。なんだまた『
先輩になった友人に冷やかされる。
「大変なんですよ。先輩。」
ふざける俺とは対照的に、
「先輩それやめてください。なんだかそれ、定着しそうで怖いんですけど。」
茉莉も抗議する。
第三次世界大戦から70年がたち、俺たち大和人が集団移住を始めてからもそれくらいたった。ここ南オーストラリア州にある大和人居住区、通称「
秋津洲はオーストラリアで最も繁栄した地域で、人口も一番多い。ここ数十年は、白人系オーストラリア人も含めてたくさんの人間が流入している。そのため、さらに街には活気があふれるようになった。
ただ残念なことに、活気と治安は並立しないらしく、女性が夜道を一人歩きできる時代はとうの昔に終わっていた。俺のダブった理由について語ろう。俺が通う誠心館高校は秋津洲でも有数の進学校である。
そして俺の妹、茉莉は本当の妹ではない。 俺たちはステップファミリーなのである。つまり俺の父親と茉莉の母親は俺たちを連れて再婚した。それはまだ6年くらい前のことだ。茉莉はかなりの美少女であり、肩までかかた長い髪に白い肌、濡れたような大きな黒い瞳を持っていて、初めて会った時の俺の感想は「まるで生きた人形みたい」だった。
それまで茉莉も俺も、幼いながらに親との死別を経験していて、やっと立ち直りかけたところでの再婚話であったのだ。当時、思春期に入ったばかりの二人は再婚に反対だったし、親に反発もしていた。
たぶん、無意識のうちに両親の中にある男「性」、女「性」であることに嫌悪感があったのだろう。だから親にとって自分が「生きがい」ではあっても「支え」にはならないことを理解したのはまだ最近のことだ。
それでも、俺は彼女を一目見た時から「保護欲」をかきたてられたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます