プロローグ② これでアニメの日本人の顔がー、なんて言わせねえよ。

  しかし、いつの時代でも戦争で路頭に迷うのは庶民と相場は決まっている。これで晴れて『戦勝国』になったものの「大和」国民は汚染された故郷が再び癒えるまで集団で移住せざるを得なかった。なにしろ、「帝国」もさんざん汚染されていて、偏西風に乗って汚染物質が次から次へと降り注ぐものだから、どうしようもない。

PM2.5に江○2:50を足したようなひどさだ。


 それで戦火をまぬかれた5,000万人の国民は5つに分かれ、受け入れを表明してくれた5つの国へ集団で渡っていった。それはアメリカ、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアだった。親切といえば親切だが、やっぱりただじゃない。彼らを待っていたのは半分砂漠になりかけた不毛の地、インフラが一切ない大草原やジャングル、針葉樹林が延々と続く土地。そんなどうしようもない土地にほぼ裸一貫でに放り込まれてしまったんだ。これで「大和」もおしまいだ。世界の人々はそう思っていた。


 しかし、「大和」の人間というのは逆境に陥ると突然本気を出し始める民族性があるようだね。50年もしないうちに、かつての不毛の土地はそれぞれの国で最も繁栄した地域になってしまう。まあ、たっぷりと世界中の華僑たちから賠償金をせしめたのもあるだろうけど。

 いうなれば災害チート民族だな。30年も経たないうちに5つの地域をあわせたら世界第二位のGDPを誇る経済連合になっていたんだ。


 そうなると、どんどん周囲の大和人以外の人間も流入してくる。「移民先」の本国人が「移民」してきたってなんだかわけわかんねえな。ただ、戦後70年も経つと、すっかり混血が進んじまった。島国で隔離されて培ってきた民族性ってやつがあやふやになっちまった。

 

 わかるか?これまでさんざん大和のアニメ顔が大和人じゃないなんて馬鹿にされてきたが、本当に大和人がアニメ顔に近づいて行ったんだ。


 しかし、これでハッピーエンドというわけじゃない。世界的な核汚染の影響で、人類の出生率が激減してしまったのだ。これでは人類が滅びてしまう、ということで西暦2202年、世界中の科学者たちがカナダのバンクーバーで集まって会議をして提言したのが「人類の未来を悲観する科学者有志が提唱し、有志企業連合が支える人類の保護計画」である。いわゆる「バンクーバー計画」である。最初っからこれで

良いだろうに。まあ、科学者とラノベ作家は長いタイトルが好きなんだよ。


 こいつは50隻の宇宙移民船を建造して、健康な人類の受精卵、あらゆる種類の動物の遺伝子や植物の種子、人類の文化や知識を詰め込んだアーカイブ、これらを載せてはるか35光年の彼方にある「K-35」星系の可住惑星に移民しようじゃないか、というものであった。


 まあ、原資は敗戦国の「帝国」の金を使えばいいので問題はなかった。5つの大和州も協力しあって2隻の移民船、「イザナギ」と「イザナミ」を建造した。その間、ワープ航法や反物質エンジンなどの核心技術も開発、実用化されたんだが問題が一つだけあった。それは、コンピューターの小型化が今一つ基準に達しなかった、というんだな、これが。

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