先生、この事案は異世界転生(or転移)に入りますか?ー星守たちの翼ー

風庭悠

プロローグ その時、地球は核の焔に包まれた。

  空にぽっかりと浮かぶ『月』には雲が渦巻いている。惑星の大半を占める森林と海によって蒼く輝く『月』。きっとあちらに住む人たちからも同じ光景が見られているに違いない。というのも、この惑星もまた、あちらの住民には『月』と呼ばれているのだ。


 そう、この惑星スフィアはガイアと連星、二重惑星をなしているのである。自転し、同じ楕円軌道上を周回し、さらに恒星の周りの公転軌道を回っている。かつて地球テラにいた先祖は、この惑星を照らす太陽を「K-35」と呼んでいたそうだ。


 ここから地球まではたった35光年、もっとも地球に近い可住惑星を持つ星系である。私たちはこの星を単に『太陽サン』と呼んでいるし、太陽系の太陽と区別したい時には「アポロン」と呼びならわしている。


 人類がこの二つの星にやってきたのはもうかれこれ2,000年以上も昔の話だ。お客さんは旅の方だね?少し我々地球人種テラノイドがこの惑星に来た経緯いきさつを聞いてもらえないだろうか。


 西暦と呼ばれた地球テラの時代の話だ。ユーラシア大陸の東方にある、とある大国が突然「大漢帝国」を名乗り、周囲の国々に臣下として服従するように求めてきた。巨大国家すぎる帝国は、国家の分裂を防ぐために対外戦争を必要としていたんだ。すぐそばにある小さな半島国家はすぐに国を棄てた。そして、とんでもないことを提言したのだ。それは200年近く前に起きた太平洋戦争の復讐戦をすべきだ、ということだ。素晴らしい忖度ぶりだ。


 それは、海を挟んですぐ東に浮かぶ「大和」という島国にだった。アジアの盟主の威信をかけ、「帝国」は「島国」に戦争をけしかけたんだ。ところが、太平洋を挟んだ向かい側の「大国」の衛星国家であった「大和」は、その国とともに防衛戦をすることになる。


  海軍力に特化した軍隊を持つ「大和」と「大国」との連合艦隊に、「帝国」ははすごい数の艦隊で攻め込んだ。ところが、一週間もしないうちに「帝国」は海軍をつぶされてしまう。装備はすごかったんだが、軍の経験と練度は金じゃ買えないらしい。特に潜水艦戦は全く歯が立たなかった。ご自慢のはりぼて空母は沈められ、原潜は太平洋に出た瞬間に魚雷の飽和攻撃の餌食になった。


 そして、連合艦隊は地上戦に持ち込まず、港湾と空港、鉄道を空爆で徹底的に破壊した。あえて都市は空襲せず、水供給や電力設備のプラントを徹底的に破壊した。


 そして、海路を封鎖、「帝国」の日干しに取り掛かる。それを見た周囲の国々は「帝国」に対して次々に反旗を翻す。陸路を使った供給に多額のマージンを要求するものあり、宣戦を布告してになだれ込む者あり、これでますます「帝国」の分が悪くなる。


 とどめが、不凍港に異常な執着心を持つ北の「強国」が攻め下ってきたことだ。パイの分け前にあずかるなら今、ってタイミングでね。こりゃ旗色が悪い、とみる「帝国」各地方の権力を握っていた軍閥が次々に帝国からの分離独立を宣言する。そりゃあ「敗戦国」になるのは御免だからね。100年以上をそれをネタにゆすり集りを働いて来てたんだ、自分がやってることは人もやるに違いない、そう思うらしい。


  これですっかり統制が破たんしかけた「帝国」は独立反乱分子に対するけん制と、戦局の打開のために、こともあろうに「大和」に核兵器をぶち込んでしまった。しかも、ダーティーボム、っていう質の悪いやつも混ぜ込んできやがった。その攻撃で大和は国民の半分と国土の半分(可住地域の9割)を喪ってしまったんだ。


 でも、まだ「帝国」は報復は無い、と見くびったんだろうね。彼らは「大和」は悪い国だ、という教育を国民に施し続けてきたもんだから、ほかの国もそう思っているに違いない、と思ってしまったのさ。


 しかし、報復として海の向こうの「大国」やら、大山脈を挟んだ隣の国が、「帝国」に核兵器で報復。北の強国も嬉々としてぶち込んできた。せっかく空襲をうけなかった「帝国」の都市は丸焼けになってしまったんだ。そして、「帝国」は7割の国民と国土の3割(可住地域のほぼすべて)を喪い、これで勝敗は決した。

 

 これがかの大惨事…誤変換だがあながち誤りでもない、第三次世界大戦だったんだ。 

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