小悪魔系

「私何歳に見える?」


 唐突に年齢の話に移り変わる彼女との会話。彼女は話している最中に突然話題を変えることがよくある。

「えっ、何だよ突然」


 女性に年齢のことを訪ねるのはマナー違反、と聞いていたため、戸惑う俺。まさか彼女からその話を振ってくるとは。

 彼女の年齢を僕は知らない。また、見た目から類推することもなかなか難しい容姿をしている。流石に小学生や老人には見えないが、ちょっと背伸びして大人ぶっている女子高生にも見えるし、少し若作りした三十代前半位にも見える。


「いいから、あたしの歳を当てたまえ」


 彼女はいたずらっぽく笑う。

 そう、彼女はいたずら好きだ。人をからかって、弄ぶのが大好きだ。そうだ、きっと彼女は俺をからかっているのだ。俺の困った顔を求めてこのような問答をしているのだ。

 まるで悪魔のようである。彼女の実年齢より高くいえば、「失礼な、あたしはそんなババアじゃねーよ」と叱られ、若くいえば「あたしがそんな子供に見えるのか」とどやされるだろう。一番適切な回答は年齢をぴたりと当てることだが、それができれば苦労はしない。

 悪魔といえば、以前彼女は小悪魔を自称していた気がする。小悪魔系、だったか、よくわからないが、一時期そんなのが流行った。つまり、彼女が人外。人間ではないのだ。悪魔は人より長生きするのだから、見た目通りの年齢ではないだろう。なるほど、小悪魔だから彼女の年齢が読めないのか。

 となると、律儀に人間の年齢を言う必要がない。悪魔的な年齢を言うのが正解だ!


「263歳」


 俺は答えた。


「なんでよ」


 彼女は俺の両側の頬をつねって横に引っ張った。とても痛かった。

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