無限鏡
「お前、誰?」
「俺? 俺はお前だよ」
「は? 何言ってるんだ。確かにお前は俺によく似ているみたいだが、俺はここにいる。だからお前は俺じゃない」
「おいおい、じゃあ俺がお前じゃないとしたら、俺は誰なんだよ」
「こっちが聞きたいっつーの。お前は誰だ」
「だから俺はお前だって言ってんでしょ。あーもう、話通じねえな」
「そんなの信じられるわけあるか。たとえお前が俺自身だとしたら、なんで俺が二人いるんだよ」
「え? 何かおかしいことでも?」
「いや、おかしいだろ、普通に考えて」
「普通に考えてもおかしくないだろ。俺がお前、お前が俺。それで何の不都合があるのか」
「はぁ……? 何言ってるんだ、お前は。同一人物が二人存在しているって時点で」
「いや、当たり前だろ。俺は鏡の中のお前なんだし」
「鏡? どこに鏡なんてあるんだよ」
「知らねー。でも俺は鏡の中にいるってことは事実だぜ」
「……わけわかんねえ。っていうか、お前が鏡の中の俺だっていうのが本当だとして、なんで鏡の中のお前が話かけてくるわけ?」
「そりゃ、鏡の中の俺が鏡の外にいる俺に話しかけられるチャンスがあるっていうなら話しかけたくなるだろ」
「……わかんねえな。俺なら怖くてやらねえ」
「自分自身が鏡の中の存在だって自覚しているかしていないかで変わるもんじゃないか? 俺は知ってるから声かけてみた。まあそんくらいのもんだ」
「テキトーな奴だな……」
「俺はお前だからな」
「くっ……お前をディスったら俺に反射してくるのか」
「そういうことだ」
「ところで、お前はどうやって鏡の中の存在だって知ったんだ?」
「ああ、俺が鏡の中にいるってわかったのも別の俺から教えてもらったんだよ。それまで俺も今のお前みたいな感じになってたぜ」
「え、俺とお前以外にもまだ別の俺が存在するってことか?」
「そういうことだ。……まあ、いつの間にかいなくなってたが」
「マジかよ……ますます謎だぜ、この現象は。もしかして、これは合わせ鏡で、俺も無限にある鏡像のうちの一人だったりしないよな」
「さあな……」
「ん? あれ、向こうから人が来るぞ。おいお前……って、鏡の中の俺がいねえ」
「お前、誰?」
「俺? 俺はお前だよ」
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