花粉症
へくしょい! 俺はくしゃみをした。どうも俺は花粉症になってしまったようで、先日からくしゃみが止まらない。サラサラした粘り気のない鼻水がとめどなく溢れ、鼻の下は赤くかぶれ、目は常に涙ぐんでいて痒い。ティッシュがないと生活していけないほど症状がひどくなってきたので、そろそろ耳鼻科へ行こうかと思っていた。
俺は職場に連絡し、午前中だけ休みをもらって病院に行くことにした。流石に常時くしゃみをしているようなこの有様ではほとんど仕事にならないし、自分としても非常に辛い。どうにかして症状を和らげたいので、職場に無理を言ってようやく確保することができた貴重な時間だ。有効に使いたい。
だが、病院へ向かう道中ももちろん花粉だらけ。油断しているとまた鼻水まみれになってしまう。俺は花粉除けのマスクを着用して出かけようとしたが、生憎切らしていたので、近所のコンビニで調達してくることにした。
そのコンビニまでのわずかな距離すら、俺にとって修羅の道だった。今は花粉全盛期。外はどこで呼吸しても花粉が大量に身体に入ってくるため、うかつに呼吸することもできない。少し不審者っぽいように見えるかもしれないが、俺はハンカチを口に当てながらできるだけ花粉を吸いこまないように外出した。
しかし、それだけでは不十分だったようだ。花粉はハンカチの横から容赦なく身体に入りこみ、目鼻を刺激した。
「ぶぅぅぅぅえぇぇぇぇっくしょぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!!!」
俺は豪快にくしゃみをした。ハンカチ一枚では受け止めきれず、あたりに透明な鼻水が飛び散った。
その鼻水は偶然にも植物にかかり、中に含まれた花粉がそこに新たな命を宿らせ、やがて実を結び種子を生み出し、地に落ちて芽吹き、それから長い年月をかけて大樹へと成長し、やがて神木として崇められるようになるが、その一方で毎年多くの花粉をまき散らし無数の花粉症の人間に地獄の苦しみを与え続けたという。
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