第21章③:ゆずりは③
21③-①:よくも俺からこんな女が産まれたものだ。
「おい、起きろ。おい」
誰かに頬をペしぺしと叩かれる。
「…ん、何だよ…」
セシルは眠い目を無理に開けた。すると、目の前にはテスがいた。赤茶色の髪に、眼鏡をかけている。
「なんだよ、テスかよ。まだ眠いから眠らせろよ…」
セシルは「むにゃむにゃ」と言うと、二度寝をしようとした
「…ぎゃ!!」
ので、テスは問答無用に、セシルの尻を蹴りとばした。
「テス、てめえ!何しやがんだ!」
セシルは尻を抱えながら、飛び起きた。
「お前には、ほとほと呆れさせられるよ。全く、よくも俺からこんな女が産まれたものだ」
テスは、はあとため息をつく。
「お前に産んでもらった覚えはねえし、お前に育ててもらった覚えもねえ!…あれ?」
セシルは、はっと回りの様子に気づいた。
「ここはどこだ…?」
辺りは真っ白で何もない世界。横にも上にも、果ての無い白い空間が続いている。立っている地面も真っ白で、地面とそうでない場所の境目すら分からない。
その景色に驚いてテスを見たセシルは、更にテスの姿に驚いた。
「そういや、なんでお前、元の男の姿に戻ってんだ…?それに、お前死んだはずじゃ…」
今更気づいたセシルに、テスはやれやれと言う。
「ああ、俺は死んだ。そして、体がなくなれば、元の姿に戻るさ。後、なんで死んだ後にこんな訳の分からない場所に居るのかは、さっぱり分からない。俺らもさっき、気がついたばかりでな」
「俺ら、って?」
他に誰かいるのか?と、セシルが思った時、テスの後ろから「よ!」とリアンが顔を出した。
「リアン!」
「えへへ、セシル。もう話せないかと思ってたけど、こんなとこでまた会うなんてキグウだねえ」
リアンは、嬉しそうにぴょんっと跳ねると、セシルの手をとった。しかし、テスは、そんなリアンを咎めるように見る。
「おい、リアン。喜んでいる場合じゃないぞ。俺とお前は死んだ者だ。死んだ者が2人もいて、セシルもここにいる。という事は…」
テスは自分のこぶしを見つめると、ガクリと地面にひざをつき、うなだれた。
「俺はあの時、力加減を誤まってしまったのか…」
そのまま「すまなかった」と土下座をするテスの前で、セシルも地面に膝をついてうなだれる。
「オレは、あんなパンチで死ぬほどヤワだったのか…」
セシルは地面を拳で叩き、鍛え方が足りなかったと自身を呪った。
「…あはは。キミ達、よく似てるねえ…」
リアンは2人を前に、苦笑いをしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます