第21章①:ゆずりは①
21-①:光栄至極
「人間の恐怖の顔を見たいだとか、回りくどいのはもうやめだ…」
女は、血走った目で下界を見下ろすと、叫んだ。
「こんな忌まわしい世界、さっさと消してやる!!!」
アメリアの姿をした王妃は、背後の空間に、幾つかの魔方陣を浮かべていた。そして、それぞれの魔方陣に乗っているのは、藍色の塊―トリフォリウムで造った爆弾であった。
「まずは、ここからだ。ここを全部消したら、次はリアナだ。リトミナを全部消した後は、サーベルンだ!」
王妃は手を振るった。すると、魔方陣は消え、その上に乗っていた爆弾は落下を始めた。
しかし、その次の瞬間、下界から白い光の矢が大量に、吹雪に逆らうかのように王妃に向かって飛んできた。
「な…!!」
王妃は、氷の結界で自らを覆う。しかし、その矢の狙いは爆弾だったらしく、矢は王妃の元へは一本たりとも来ず、皆落ちつつあった爆弾に刺さっていく。
「…!!」
そして、王妃の目の前で、爆弾はぼろぼろと白い灰のようになって崩れていった。
「一体誰が…まさか」
「そのまさかだよ、王妃サマ」
王妃はその声にはっと振り返る。
「…テス・クリスタ…」
そこには、魔方陣にテスが乗って、浮いていた。ノルンの転送で地上から移動してきたのだ。
「フルネームで覚えていてくれて、光栄至極だよ」
テスはにこりと笑う。王妃は忌々しそうに唇を噛む。
「…白い矢ということは、どうやらキミだったようだね。ホリアンサで、化け物たちの狂宴が始まるのを邪魔したのは」
「俺の担当は水色の矢だけど、一応はまあそういう事だな。とりあえず、死ね!」
テスは叫ぶと、爆炎を放った。王妃は「何だこの程度」と、氷の障壁を張る。
―しゅぱん、ぱしゅん
しかし、王妃は、業火の燃え盛る音に紛れて放たれたその音に、気づかなかった。
「…!!?」
背に激痛が走る。それと同時に氷の障壁がボロボロと崩れ始める。王妃が、はっとして振り返ると、そこにはレスターと銃を構えたセシルがいた。
「…貴様らああ!」
王妃は怒りのままに、氷柱を幾つも出現させた。しかし、ウイルスに感染させられた肉体では、魔法はうまく扱えない。氷柱はいびつな形として現れ、完成するなり地上へと落下を始める。
「…くそ…!!」
あっさりと罠に嵌められた王妃は、心底忌々しげにテスを睨みつけた。
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