第6話

 人生で初めて充実感を感じる日々を送っていたケンだったが、ある日、ママからパパの転勤が突然決まったことを告げられ、引っ越しを余儀なくされてしまった。

「引っ越しなんて残念だよ」

 いつも微笑を絶やさないユキが、珍しく真顔だった。

「僕もだよ」

 ケンはため息をつく。

「教室にはいつまで来れるの?」

「来週までだって」

「来週か……急だね」

「ねえ、ユキ。今日は端末忘れちゃったんだけど、来週連絡先交換してもらっていい?」

「うん、もちろん」

 次の週、ユキは教室に来なかった。結局ケンは誰にも連絡先を教えないまま引っ越した。


『それで?』

「その日からユキは入院してたんだってさ。マイケルからユキの訃報がママに来て知ったんだ」

『そう』

 サーシャはそれ以上何もモニターに表示させない。

 やることもないケンは、ただぼーっと届いた封筒を見つめた。何の変哲もない水色の封筒。消印は以前住んでいたところではなさそうだ。

『どこの消印なの?』

 検索エンジンを開いて都市を検索するケンに、サーシャは尋ねた。

「教室の隣街」

 そう答えたとき、ケンは思い出した。

「ダンの会社のある街だ!」

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