第109話 ふたりの距離(4)

「って、どう思う?」


南はさっそく秘書課の志藤のところに行った。


「ていうか。 あいつらやっぱそんなんなってたの?」


志藤はそこに驚いた。



「美咲ちゃんに聞いたらさあ。 八神、亡くなったおばあちゃんと両家の家族の前で美咲ちゃんと結婚するって宣言したんやって、」


「ふうん、」


「でもいきなり合コンってどーよ、」


「ええんとちゃうの? 本人同士がいいのであれば。」


「ったく近頃の若いもんは! 節操がないよ、節操が!」


「おばはんか?」


志藤は南の反応に笑ってしまった。




合コンを終えて家に戻ると11時だった。


八神が部屋の鍵を開けて入ると電気がついている。


「あれ?」


「ああ、おかえり。」


美咲が来ていた。



「なんだよ・・おれ、電気消すの忘れたかと思っちゃったじゃん・・」


「今日、会社の人がね。たくさんくれちゃって。 ほら、」


ビニールいっぱいに入ったアスパラとじゃがいもをさした。


「北海道の人がいてね。 実家からいっぱい送ってきてくれたんだって。 みて~。 このアスパラ、おいしそう。」


「これを焼いて醤油をつけただけでもうまいんだよな~。」


「合コンでなんか食べてきた?」


「あんまり・・」


「じゃあ、ちょっと食べようよ。」


「もう11時過ぎてるよ、」


「ちょっとだけ。」




「あ~~、ほんっとアスパラって美味しい。 ホタテなんかと炒めるとさらに美味しいんだよね。 誰かホタテくれないかな・・」


美咲は言った。


「なんでもらうことが前提なんだっつーの。」


八神は焼いたアスパラを少し食べて白ワインを飲んだ。




「ね・・泊まってもいい?」


美咲も飲んでしまって、とろんとした目で言った。


「ん・・いいよ。」


「シャワー貸して。 今日も・・あつかったァ・・」


嬉しそうにニコーっと笑った。




ほんとうに


こうして


抱き合うことも


前より減ってしまった気がする。



こんなん


することがすっごく後ろめたかったわりには


彼女と二人きりになると


やっぱり


おさえきれずに


抱くばっかりで。




「・・キス・・して、」


美咲は苦しそうに息をついて言う。


「え・・?」


「声・・すっごい出ちゃいそうだから・・」



ゾクっとした。


そんなこと言われると


ほんっと・・燃えてくる。


八神は美咲の口を塞ぐようにキスをした。



もう


気持ちよくって


どうにかなりそう・・



八神は美咲を抱きながら快感に身をゆだねていた。



が。


「ね・・・」


美咲が頬に手を当ててくる。


「ん?」



「合コン・・どうだった?」


思いっきりガックリきた。



「・・最中に・・そんなこと、聞くなよ。 萎える、」


心底情けなくなった。


「・・かわいい子、いっぱいいた?」


「・・きゃぴきゃぴした・・OL。 って、おまえ、いっつもシてる最中に余計なこと・・しゃべるから・・没頭できねえっつの・・」


ちょっと腹立たしくなり、ぎゅうっと彼女の身体を抱きしめた。


「もう・・、」


美咲は彼の背中にぎゅっと抱きついた。



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