第18話 本心(3)
「だからさあ、それは。もう、なんか間違っちゃったんだよ、」
八神は泣きそうな顔でそう言った。
「ふざけた気持ちだったの? あたしは、あたしはすっごく嬉しかったのに!! シてる最中に慎吾、あたしのこと好きだって言ったじゃない!!」
恥ずかしげもなくそんなことを言い出す美咲に
「バカっ! やめろ、もう!!」
八神は南を気にして彼女の口を押さえた。
「あ~、ごめっ・・あたし、帰る。 じゃね、」
玄関で靴を履いていた南はいたたまれなくなり、バッグを持ってそそくさと出て行ってしまった。
「も~~!! あたしは本気だったのに~!!」
美咲はテーブルに突っ伏して大泣きし始めた。
「も、泣かないでくれよ、」
泣きたいのはこっちだよ・・。
とりあえず、落ち着かせた美咲を自分のベッドに寝かせ、自分はキッチンで布団に包まって眠った。
ほんと
感情一直線で
周りのことも
後先のことも
全く考えなくて。
おれのことは
もう
何もかもお見通し。
ウソなんかつけっこないってわかってたけど。
だけど
もう
そうするしかない気がして。
なんでおれ
美咲のこと
抱いちゃったんだろ。
禁断の果実に
手を触れてしまったような気持ちで。
『あの日』から
ずっと
後悔してる。
おれなんかの
どこがいいんだ。
ほんっと
諦めてくれればいいのに。
やっぱり眠れなかった。
「・・昨日は本当にすみませんでした。」
翌朝、八神は南に深々と頭を下げた。
「あたしはいいけど。 なんか、複雑そやなあ、」
何だかちょっとかわいそうになってきた。
「ほんっともう、どうしていいかわかんないっスよ。」
本音を言った。
「すっごいカワイイ子やん。 ちょっと気が強そうやけど。 なんでアカンの、」
子供に言い聞かせるように優しく言った。
「おれは、美咲のこともう・・幼なじみどころか家族みたいに思っちゃって。 保育園から高校までずうっと一緒だったけど、女とかそういうこと意識したこと一度もなくて。 お互いつきあってる人間もいたし、美咲がおれのことそんな風に思ってたのさえもわかんなかったし。 だって小学校2年まで一緒にお風呂入ってたし、なんと小学校6年まで一緒の部屋に寝たりしてたんですよ? もう家族以外考えられないでしょうが。」
八神は少し動揺しつつそう言った。
「へ~~。 それ、けっこうスゴイなあ。 小6なんて言ったら第1次成長期はいってるもんね、」
南は少し驚く。
「美咲んちも親、忙しかったから。 おれと美咲はウチのばあちゃんがめんどうみてて。 美咲は1週間の半分はウチにいたし。 それをですよ? なんであいつはおれのことをそんな風に思えるのかがわかんない。」
はあっとため息をついた。
「じゃあさ、なんで、そういう関係になっちゃったの?」
ちょっと微妙なところに触れてみた。
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