第17話 本心(2)
「すみません。慎吾に頼まれたんでしょう?」
美咲は南にそう言った。
「えっ!」
もう八神は慌てふためいて、
「な、なに言ってんだよっ! 芝居じゃないぞ!」
と否定した。
「慎吾。 年上の人好きじゃないもん、」
美咲は平然として言いはなった。
「は・・」
体の力が抜けてゆく。
「慎吾はお姉ちゃんたちを見てるから、なんかトラウマになってるのかわかんないけど、今まで好きになった子だって同級生か年下ばっかだし。 しかも。 絶対に慎吾が好きになりそうなタイプじゃない。」
美咲は南を見て思いっきりそう言った。
「はァ~~~???」
南の琴線に触れてしまったようだったので、
「バっ、バカっ! なんてこと言うんだっ! せ、専務夫人だってのに・・」
口が滑ってしまい、美咲は
『やっぱりね』
という顔をしてため息をついた。
「そんな偉い人の奥さん連れてきたの? なに考えてるの!?」
「や、あっと、だから・・。」
「そんなにウソついてまであたしのこと追い返したいの!?」
「違うって!!」
「慎吾のウソなんかに絶対に騙されないんだからっ!!」
修羅場になりそうだったので、南は
「あ、あのさ。 近所迷惑だから、とりあえず中入ったら?」
と、顔をひきつらせて二人を部屋の中に押し込んだ。
「お、お茶、淹れよっか?」
わけがわからないまま、巻き込まれた南は気を遣ってそう言った。
「いえ! おかまいなく!」
美咲はきっぱりとそう言って、八神を怖い顔で睨みつけている。
もう叱られた子供のように八神はうな垂れていた。
「慎吾があたしを追い返したいって思ってるのはわかってる。 昨日帰って来なかったのだって、どーせ、あたしがいたから帰って来たくなかったんでしょ!」
「だからさあ、」
「お父さんとケンカして飛び出してきたのは事実だけど。 慎吾が思ってる通り。あたしは慎吾のそばにいたくて東京に来たんだから!」
八神は顔を上げた。
「あたし、もう慎吾以外の男、考えられない。」
美咲のその言葉に八神ならずとも南も驚いた。
「美咲・・」
「お父さんが見合いしろとかうるさくなってきたけど。 でも、あたしは慎吾しか考えられないの! もう、ずうっと小さい頃から慎吾しかいないの!!」
美咲は子供のようにポロポロと涙をこぼした。
うっそやろ~?
八神に
こんなカワイイ子が
ゾッコンなんて!!
南はお茶を淹れるフリをしながらもう耳がダンボになりっぱなしだった。
「・・困るよ、おれ。」
ずっと黙っていた八神がようやく口を開いた。
「慎吾、」
「わっかんねえ。 ほんっと。 美咲のことは、マジ・・家族みたいだし。」
「でも! あたしとHしたじゃん!!」
「わーっ!!」
南は思いっきり動揺してお茶っ葉を茶筒から飛び出させてしまった。
「あ~、ごめっ・・あたし、帰る。 じゃね、」
南はいたたまれなくなり、バッグを手にした。
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