名前の由来と意味②【サ行~ラ行】
前編の続きです。
――サ行――
◆サルヴァトーレ Salvatore(男)
意味:神は救い主
◆ジネヴラ Ginevra(女)
意味:光る精霊、白いエルフ
◆ジェンマ Gemma(女)
意味:新芽
◆シモーネ Simone(男)/シモーナ Simona(女)
意味:神は聞いた
異形:シモネッタ(女)
◆ジュゼッペ Giuseppe(男)
意味:神は家族を繁栄させる
【聖ヨセフ】マリアの夫でイエスの養父。妻が神の子を身ごもったことから「寝取られ男」のレッテルを貼られ、子供につける名前としては近代まで人気がなかった。
◆ジュリオ Giulio(男)
意味:ユピテルに捧げた
異形:ジュリアーノ
【ガイウス・ユリウス・カエサル】古代ローマの軍人、政治家。複数の暗殺者に23カ所を刺されて死亡。
◆ジョルジョ Giorgio(男)
意味:大地で働く、農夫
【聖ゲオルギウス】竜退治の逸話をもつ伝説の騎士。抜き身の剣と折れた槍がシンボル。
◆ジョヴァンニ Giovanni(男)/ジョヴァンナ Giovanna(女)
意味:神は憐れんだ
異形(男):ジャンニ、ヴァンニ、ナンニ、ジャンノッツォ
異形(女):ジャンナ、ヴァンナ、ナンナ
【福音書記者ヨハネ】毒杯を飲んだが死なず、煮えたぎる油の大釜に投げ込まれても無傷で出てきた。天寿を全うした唯一の使徒。
◆シルヴェストロ Silvestro(男)
意味:森の住人
◆スザンナ Susanna(女)
意味:蓮の花、ユリ
◆ステファノ Stefano(男)
意味:冠
【聖ステファノ】石打ちの刑で殺され、キリスト教の最初の殉教者になった。柔和な表情の青年として描かれる。
◆ステッラ Stella(女)
意味:星
◆ズメラルダ Smeralda(女)/ズメラルド Smeraldo(男)
意味:エメラルド
異体:イスメラルダ
◆セバスティアーノ Sebastiano(男)
意味:崇拝に値する
異形:バスティアーノ
【聖セバスティアヌス】全身を矢で射られ、回復したあと棍棒で殴り殺された。兵士、アスリート、同性愛者の守護聖人。
――タ行――
◆ダニエーレ Daniele(男)/ダニエーラ Daniela(女)
意味:神は我が審判者
異形:ダニエッロ
◆ダミアーノ Damiano(男)
意味:征服する
◆チェーザレ Cesare(男)
意味:淡青色の目(?)
ユリウス・カエサル(Caesar)が由来。エトルリア語起源で、言葉の意味は不明。
◆ディアーナ Diana(女)
意味:女神、輝く
【ディアーナ】狩猟の女神で月の化身。ギリシア神話のアルテミスに対応する。
◆ドナート Donato(男)
意味:神の贈り物
異形:ドナテッロ、ドナテッラ(女)
◆ドメニコ Domenico(男)/ドメニカ Domenica(女)
意味:主に捧げた
◆トンマーゾ Tommaso(男)/トンマーザ Tommasa(女)
意味:双子
異形:マーゾ、トマシーナ(女)
【使徒トマス】イエスが復活して目の前に現れても信じず、脇腹の傷に指を突っ込んだ。
――ナ行――
◆ニッコロ Niccolò(男)
意味:人々の中の勝者
異形:ニコラ、ニコラオ、コーラ、ニッコローザ(女)
【聖ニコラウス】子供の守護聖人。北欧ではラテン語(sanctus Nicolaus)が崩れて聖クロースと呼ばれ、サンタクロースの起源になった。
――ハ行――
◆パオロ Paolo(男)/パオラ Paola(女)
意味:小さく謙虚な
異形(女):パウラ、パウリーナ、
異形(男):パゴロ
◆バッティスタ Battista(男)
意味:洗礼者
【洗礼者ヨハネ】牢獄で斬首された。斬られた首は皿に乗せられ、舞踏の褒美としてへロディアの娘サロメに与えられた。
◆バルド Baldo(男)
意味:勇敢
異形:ウバルド、バルディーノ
◆バルトロメオ Bartolomeo(男)/バルトロメア Bartolomea
意味:タルマイの子
異形:バルトーロ、メオ、メア(女)
【使徒バルトロマイ】生きたままナイフで全身の皮を剥がれて殉教し、革なめし職人と皮革業者の守護聖人になる。
◆バルナバ Barnaba(男)
意味:慰めの子
◆ピエトロ Pietro(男)
意味:石、岩
異形:ピエロ、ピエロッツォ、ピエラ(女)
【使徒ペトロ】逆さ
◆ファウスティーナ Faustina(女)
意味:情け深い、立派な
◆フィリッポ Filippo(男)/フィリッパ Filippa(女)
意味:馬を愛する
異形:フィリッピーノ、リッポ
◆フェデリーコ Federico(男)/フェデリーカ Federica(女)
意味:平和を保証できる
異形:フェデリーゴ
◆フェルディナンド Ferdinando(男)
意味:平和のために勇敢に戦う
異形:フェルナンド
◆フランチェスコ Francesco(男)/フランチェスカ Francesca(女)
意味:フランスの
異形:チェスコ、チェッキーノ、チェッコ
【アッシジの聖フランチェスコ】父親の持ち物を勝手に売り払って寄付し、訴えられると全裸になって世俗と決別する意思を示した。
◆ベアトリーチェ Beatrice(女)
意味:至福をもたらす者
◆ベネデット Benedetto(男)/ ベネデッタ Benedetta(女)
意味:神の祝福
◆ベルナルド Bernardo(男)/ベルナルダ Bernarda(女)
意味:熊のごとく強靭
異形:ナルド
――マ行――
◆マッダレーナ Maddalena(女)
意味:マグダラの
【マグダラのマリア】改悛した娼婦の守護聖人。結わずにゆったりと流した長い髪がシンボル。
◆マッテオ Matteo(男)/マッテア Mattea(女)
意味:神の贈り物
異形:マッフェオ、フェオ、フェア(女)
◆マリア Maria(女)
意味:愛された
異形:マリエッタ
◆マルゲリータ Margherita(女)
意味:真珠
異形:マルガリータ、リータ
◆マルコ Marco(男)
意味:軍神マルス(ギリシア神話ではアレース)に捧げられた
異形:マルチェッロ
◆ミケーレ Michele(男)
意味:神のごとき者は誰か
異形:ケーレ、ケッロ、ミケロッツォ
【大天使ミカエル】鎖帷子と燃える剣または槍で武装した天使の総司令官。神に反逆を企てたルシフェルを撃退した。警官、消防士、救急隊員の守護天使。
――ヤ行――
◆ヤコポ Jacopo(男)/ヤコパ Jacopa(女)
意味:神は守護した
異形:ジャコモ、ラーポ、ヤコマ(女)
――ラ行――
◆ラウラ Laura(女)
意味:月桂樹
◆ラザロ Lazzaro(男)
意味:神に救われる
【ラザロ】病死するが、4日目にイエスが「ラザロ、出てきなさい」と言うと布に巻かれたまま墓から出てきた。復活のシンボル。
◆ラファエロ Raffaello(男)
意味:神は癒した
【大天使ラファエル】旅人、病人を守護する。あらゆる治療をつかさどる癒やしの天使。
◆リヴィア Livia(女)
意味:青白い
◆リナルド Rinaldo(男)
意味:神の助言で統治する
◆ルカ Luca(男)
意味:光
◆ルクレツィア Lucrezia(女)
意味:森の女王
◆ルチア Lucia(女)
意味:明るい、光を放つ
【聖ルチア】眼病の守護聖人。拷問で両目をえぐり出されたとも、恋人が彼女の目の美しさを頻繁に褒めるので苛立って自分の両目をえぐり出して彼に送ったとも言われる。
◆ルドヴィーコ Ludovico(男)
意味:誉れ高い戦士
異形:ロドヴィーコ
◆レオナルド Leonardo(男)/レオナルダ Leonarda(女)
意味:獅子のように強い
異形:リオナルド
◆ローザ Rosa(女)
意味:薔薇
◆ロドルフォ Rodolfo(男)
意味:誉れ高い狼
異形:リドルフォ
◆ロレンツォ Lorenzo(男)/ ロレンツァ Lorenza(女)
意味:ラウレントゥムの
異形:レンツォ、ローレ、ネンチャ(女)
【聖ラウレンティウス】鉄格子の上で焼かれて殉教。処刑人に「こちら側はよく焼けたから裏返して反対側も焼くとよい」と言ったという。
――複合系――
2つの名前が組み合わさった、やたらと
◆ジャンバッティスタ Gianbattista(=Giovanni Battista 洗礼者ヨハネ)
◆ジャンマリーア Gianmaria(聖ヨハネ + 聖マリア)※男性名。
◆ピエルパオロ Pierpaolo(聖ペトロ + 聖パウロ)
◆マルカントニオ Marcantonio(福音書記者マルコ + 聖アントニオ)
◆ミケランジェロ Michelangelo(大天使ミカエル + 天使)
◆レオンバッティスタ Leonbattista(獅子 + 洗礼者ヨハネ)
*
ここからは現代の話になります。
さて、これらの名前は今でも使われているのだろうか。統計によると、子供につける名前の2018年の人気ベスト10は次のとおり。
女の子
1. ソフィア
2. アウローラ
3. ジュリア
4. アリーチェ
5. エンマ
6. グレタ
7. ジョルジャ
8. ジネヴラ
9. マルティーナ
10. ベアトリーチェ
男の子
1. フランチェスコ
2. レオナルド
3. アレッサンドロ
4. マッティーア
5. ロレンツォ
6. アンドレア
7. ガブリエーレ
8. トンマーゾ
9. マッテオ
10. エドアルド
女の子の名前の「ソフィア」、「アウローラ」などはルネサンス時代にはほとんど存在しない。古典的といえるのは8位の「ジネヴラ」と10位の「ベアトリーチェ」だけで、あとは比較的新しい。
いっぽう男の子は「マッティーア」と「エドアルド」を除けば、すべて上で挙げた古典的な名前である。
伝統的な女性名が減少傾向にあるのかどうかはこの統計だけでは分からない。「アンナ」「マリア」といったクラシックな名前の女性は現代でもたくさんいる。
とはいえ、女の子の名前は時代の変化がうかがえるのに対し、男の子の場合は依然として伝統的な名前が好まれる傾向にあるのは興味深い。
1位の「フランチェスコ」は12世紀に生きた修道士で、イタリアの国の守護聖人でもあり、遺体は近隣の町に盗まれるのを恐れてアッシジ大聖堂の地下深くに厳重に安置されている。名前の人気の理由は同名の現ローマ教皇の影響かとも思ったが、なんと2001年から不動の1位(注※)を保っているとのこと。さすがはキリスト教聖人世界のスーパーアイドルである。
(※統計によって異なる場合があります。)
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