流れ星・3
夜半を待たずに曇りになった。
流れ星どころか、星すらも見えない。
それでも私たちは芝生の上に敷いた銀シートの上に寝転がって空を見ていた。
シートがかすかに湿っぽい。夏なのに寒い。
夜という時間が日中とはまったく違うことを、私は身をもって実感していた。
でも、暗くはない。
雲が遠くの町明かりを反射して、白く明るく光っているのだ。本当の闇は手に入りにくいものらしい。渡場が去っていったのも、少しはうなずける。
やがて仲間の間からあきらめの声がもれはじめた。
「あ、流れ星ーーーー!」
と、叫びながら杉浦が漁業ライトを空に向かって投げた。
漁業ライトは弧を描きながら、空に光の筋をひき、地面に落ちた。
雲ばかり睨んでいたいた私たちは、ナンセンスな人口流れ星に思わず笑った。
杉浦は、私たちが笑ったことがよっぽどうれしかったらしく、持っていたライトをすべて灯した。
「あ、流星雨ーーーー!」
手のひらいっぱいに漁業ライトを持って、杉浦は思いっきり空に向かって投げた。
黄緑色の鮮やかな光が、くるくると街灯りで白々と染まる曇り空に舞い、やがて不自然な蛍光色の雨になった。
芝生に散らばったライトを、杉浦はひとつひとつ拾い集める。
その背中で、雲をつき抜け閃光が走った。
「ああぁああーーーー!」
全員が一斉に叫び声を上げた。
誰かの声で、あわてて目を向けたにもかかわらず、私にもその光が見えたのだ。私の声も、いつのまにか仲間の絶叫に混じっていた。
光は一瞬白く輝き、緑ともオレンジともいえない微妙な残像を残しながら消えた。
流れた経路に、白い煙のような痕が浮き上がった。
「!!!! まだ……まだ見えている!」
かなり大きな……火球といわれる流星。それこそ、本当の流れ星だった。
たぶんペルセ群ではなく、人工衛星の破片とかそのようなものだったのかもしれない。
やがて、くっきりと残った痕も、まるで夢幻であったかのように消えていった。
私は、目の前で見た天空ショーにしばし興奮していた。
これを見れただけで、私は大満足だった。
美弥も理子も、流星観測はよくしているという高井さえも興奮気味だった。
「えーーー、みていないよぉ……」
杉浦だけが、悔しそうな声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます