チョコっと義理を

チョコっと義理を

　バレンタイン、いつもと少し違う教室。

　男子達の中にはいつもよりもそわそわとした雰囲気が漂う。

　女子達はキャーキャーといつも以上に騒ぎあっている。

　美沙は毎年のように女子の友達にチョコレートを渡して回っている。

　あっ、私の方にも来てくれた。

「はい、千佳の分」可愛らしくラッピングされたハートのチョコレートを受け取り、美沙の方をじっと見つめる。

「やだなぁ、義理だからね？」そう言って美沙は廊下の方へ走っていってしまった。

　義理、とはどういうことだろうか？

　友チョコでない分、自分も恋愛対象としては見られているということだろうか？

　本命ではないということが伝えたかったのだろうか？

　それとも単なる気まぐれか？

　なんにせよ、あんなに可愛い美沙のような娘の本命になれる人間というのは羨ましいものた。

　ひょいと口に運んだハートのチョコは、とても甘くて少し苦かった。