透明な私

春風月葉

透明な私

 民家の屋根の裏で、ひっそりと後にくる死を待つ。

 私は氷柱。

 動くことも許されず、その身は涙となって溶け落ち、私という存在は削られていく。

 あぁ、また一滴、命の雫が地に消えた。

 そんな私が悲しくて、涙を流して泣くけれど、泣くほど命は燃えていき、最後の時は近づいて、わかっているのにその涙は流れることをやめてはくれない。

 そんな私は憧れた。

 一面を埋める濁りのない白に、ただ憧れた。

 ふわりふわりと地に降りる様は、まるで天使のようだったし、日の光を受けて光る様は、宝石のようだった。

 あぁ、私もあんな風に生まれることができたなら、どんなに幸せだろうか…。

 そんなことを思いながら、私は私の最後の一滴を地に零した。


 時は流れ、私は巡る。


 ふわりふわりと私は地に落ちていた。

 私は雪。

 ふわりふわりと地に落ちて、同じ白に潰されて、光の下には戻れない。

 あぁ、視界が埋まっていく。

 私が他の雪に埋まりきる直前、遠くの民家で光る何かを見つけた。

 透き通った円錐の身体の中に一面の白い世界を閉じ込めて、ポタリポタリと何かに涙を流す美しい氷の造形。

 あぁ、私もあんな風に生まれることができたなら、どんなに幸せだろうか…。

 そんなことを思いながら、私はむせ返るような白の中に消えた。

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透明な私 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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