ポーカーフェイス

春風月葉

ポーカーフェイス

 彼女の顔は、精巧な西洋人形のように美しいのに、時が止まってしまったかのようにピクリとも表情が変化しない。

 笑えばきっと可愛らしいのに、もったいない。

 彼女の無表情は大して役に立たない。

 トランプで遊んだときは傑作だった。

 ババ抜きならポーカーフェイスが役に立つだろうと思ったのに、ババを引く度に頭を抱えてしまうから、わかりやすくてゲームにならなかった。

 彼女の無表情は割と不便だ。

 理解されにくいし、誤解されやすい。

 能面なんていうあだ名でイジメを受けていたこともあったそうだ。

 彼女の変わらない表情が私を慰めてくれたことが何度もある。

 辛いとき、苦しいとき、どんなときでも、彼女は変わらない顔で私の話を聞いてくれる。

 喧嘩した時も、告白した時も、遊んだ時も、そして別れた時も、その顔は変わらなかった。

 彼女はあの時どんな気持ちだったのだろう。

 私と同じ気持ちでいてくれていたら、どんなに嬉しいか。

 そうして私も、たくさんの感情を分厚い顔の裏に隠した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ポーカーフェイス 春風月葉 @HarukazeTsukiha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る