私の世界

春風月葉

私の世界

 世界は無機質だ。

 そう感じた瞬間から、私の人生は色のないものになった。

 世界は仮面を被っている。

 そう感じた瞬間から、私の表情は仮初の笑みで固まった。

 世界は作業的だ。

 そう感じた瞬間から、私は機械のようになり下がった。

 世界は組織的だ。

 そう感じた瞬間から、私の存在は一つの歯車に過ぎない。

 それなのに、ふと顔を上げた先の海は透き通るような優しい青で、足下に咲く花は淡く可憐で、無機質な建物も夕日でその体を鮮やかに焦がしていた。

 息が苦しくて仮面を外すと、私の素顔は瞳から大きな感情の雫を零した。

 長いこと降ることのなかった涙の雨は、しばらく止まることはなさそうだった。

 おそらく世界は変わらない。

 しかし、確信を持って言えることがあった。

 その日、仮面を外して見た世界は、どうしようもないほどに美しく、優しい光を放っていた。


 今日の私もつまらない世界に存在した。

 ふぅ、と吐息を空へ放ち、使い慣れた仮面に手をかける。

 今日の私はどんな表情をしているだろうか?

 …あぁ、世界は美しい。

 素顔の私はそう呟いた。

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私の世界 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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