死の華

春風月葉

死の華

 葉の上に咲く一輪の可憐なる白。

 その姿は花より美しい華であった。

 蜜蜂は惹かれるようにその白く美しい可憐なる華に近づいていく。

 しかし、その華は造花であった。

 一度魅入られては最後、蜜蜂は白い死神にその魂を奪われてしまっていた。

 死神の名は花蟷螂、ランの花に擬態する美しき花の捕食者だった。

 このひときわ美しい華を咲かせていた狩人はまだ幼虫だろう。

 花蟷螂の美しさは幼虫の段階で完成している。

 成虫になるとその美しさは褪せていくのだ。

 それは人のようでも、花のようでもあった。

 この華も色褪せてしまうのだろうか…。

 あぁ、また一匹、蜜蜂が華に魂を差し出した。

 私もまた、白い死神の狩りに魅入られていた。

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死の華 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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