今を観る時間の話

春風月葉

今を観る時間の話

 大人は過去に縛られ、いつしか前を向けなくなってしまう。

 子供は不鮮明な未来にばかり気を取られ、不安や期待はただの皮算用に浪費されていく。

 彼ら人間は思い出と夢に閉じ込められて、大事なことに気づけない。

 馬鹿だなぁ、大切なのは今なのに。

 今日も大人は子供の足枷となり過去を語る。

 子供は逃げるように可能性の世界に夢をみる。

 そして私達時間は今を流れる。

 この花はこんなにも今を美しく必死に生きているというのに、この風も二度と吹くことのない一度きりのものなのに、この虫の囀りも同じ音を聞けるのはこれが最後かもしれないのに…。

 あぁ、どうして人間は今を感じようとしないのだろう。

 今日も私は、そんな彼らの今を流れる。

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今を観る時間の話 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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