『ジェーン・ドウの解剖』 寝たきりのスラッシャー

 身元不明の女性を解剖することになった、検視官親子の悲劇。



 一家三人の惨殺したいがあった家の地下から、身元不明の女性が掘り起こされた。


 検死官を務めるオースティンとトミー親子はラジオを大爆音で流しながら、検死の訓練をしていた最中だった。


 オースティンが彼女とデートの約束を交わした直後、死体が運ばれてきた。


 老体のトミーを一人残して遊びになど行けない。

 オースティンは父の元へ。二三時に来てくれと彼女と約束した。


 これが、最悪の事態を生むと知らずに。



 

 遺体の状態はキレイだ。

 調べてみると、手足の関節は砕かれ、舌は切断され、肺は焼かれていた。


 なのに、外傷はどこにもなかった。 


 胃の中に、小さな布包みが入っていた。

 中には被害者から抜き取った歯が。布には奇妙な文字と紋章が描かれている。


 さらに調べていると、ラジオが嵐の到来を伝える。


 ラジオは最後に、





「 あ な た が た は 逃 げ ら れ な い 」





 と。


 

 直後、嵐が発生し、証明は砕け、停電になる。

 瞬間に見えた奇妙な人影の出所をさぐるため、オースティンは廊下へ。


 見つけたのは、虫の息になった飼い猫だった。

 トミーは猫を介錯し、ペット用の火葬場へ。


 詳しく調べると、皮膚の内側にすら、呪文のような文様が書かれていた。


 人間のなせる技ではない。


 

 被害者は儀式的犯罪によって殺害されたことが分かった。


 何か不吉なモノを呼び出してしまったのだろうと。



 身の危険を感じたオースティンは、被害者の解剖を諦め、遺体を燃やそうとした。

 だが、燃えたのは手術室の天井だけ。


 被害者の身体は、以前よりキレイになっていた。

 

 極限状態の二人をさらに追い詰めるかのように、悲しい事故が起きる。

 

 オースティンは、逃げようと思えば逃げられた。

 父を一人残して、さっさとデートに向かえばよかったのだ。


 そうすれば、彼女がこの家に戻ってくることもなかった。


 後に、それが正解だったとオースティンは深く後悔する。


 

 そもそも、解剖を引き受けるべきではなかったのだ。


 彼女は寝たきりでありながら、スラッシャーだったのだから。



 

 冒頭シーン、物音が聞こえ、オースティンは廊下に出ると、恋人に驚かされた。

 恋人は、死体を見たいという。


 父が許可しないと言うが、父トミーは見せてやるという。


 彼女は、遺体の足首にくくりつけられた鈴に着目する。

 これは、遺体が本当に死んでいるかどうかを確認するための道具だという。


 この小道具が、中盤で活きてくる。


 遺体が歩いてきたと分かるような演出になっているのだ。


 本作のスラッシャーは、ずっとその場から動かない。

 なのに、次々と恐怖を撒き散らし、被害者を地獄に突き落とす。


 ただ、そこに存在しているだけで、災厄となっているのだ。

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